(私説・論説室から)古墳時代の方が… - 東京新聞(2020年12月2日)

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もしかして女は古墳時代の方が生きやすかったんだろうか。国立歴史民俗博物館で開催中の「性差(ジェンダー)の日本史展」(六日まで)を見に行き、濃密な内容に刺激を受けつつ、切なさもこみあげた。
展示や図録によると、弥生時代後期(一世紀後半)から古墳時代前期(四世紀)にかけて、女性首長は一般的に存在していた。前方後円墳に埋葬される女性首長の割合は三割から五割。男性の場合は鉄のやじりか甲冑(かっちゅう)が一緒に埋葬されているため、性別がおおよそ判別できるのだという。
三割は、政府が二十一世紀になって「指導的地位に占める女性の割合」の目標としている数字だ。今年までに達成することを目指していたが、できずに延期した。
男性優位・父系原理の国家体制を決定付けたのは、七世紀末に始まった、中国の法体系(律令(りつりょう))の導入。明治維新後に作られた法体系も女性を排除する方向に働いた。
いい意味で心がへとへとになった展示の最後、元厚生労働省事務次官村木厚子さんのインタビュー動画に少しだけ励まされた。「制度で排除されてきたものを、制度でまた取り込んでいくことができるんじゃないか」
来館者には若い女性グループやカップルもいた。彼女ら、彼らが生きやすい社会にするためにも、分厚い岩盤に穴を開けなければ。 (早川由紀美)