<金口木舌>板井優さん - 琉球新報(2020年11月15日)

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4年前、名護市辺野古で新基地建設への抗議運動を取材中、初対面の男性から声を掛けられた。熊本から訪れた弁護士、板井優さんが辺野古を巡る情勢を聞いてきた
▼旧姓は具志堅。結婚を機に変えた。1949年那覇市で生まれ、首里高を経て熊本大に進んだ。数日後、板井さんから自著伝「裁判を住民とともに ヤナワラバー弁護士奮闘記」(熊本日日新聞社)が届いた
▼板井さんは大学在学中、水俣病の惨状に衝撃を受けた。水俣訴訟やハンセン病西日本弁護団の事務局長のほか、熊本県の川辺川に計画されたダムの利水を巡る訴訟で弁護団長も務めた
▼人権感覚は米軍統治下の沖縄で培われたと著書で記す。中学1年のとき、同学年の国場秀夫さんが米軍トラックにれき殺された。運転手は軍事法廷で無罪となり憤った。復帰運動に取り組む弁護士にあこがれた
▼一度始まった大型公共工事は止まらないという流れに疑問を呈し、「住民こそが主人公」の合言葉でダム埋没予定地の住民らと共に裁判闘争で勝利した。2月、板井さんは腎不全のため死去した。70歳
熊本県を襲った7月の豪雨後、ダム計画を撤回していた蒲島郁夫知事は容認案に向けて調整している。賛否を巡る動きが再び顕在化している。「沖縄の問題は熊本の問題」「地方を変えることが日本を変える」。辺野古で語った板井さんの姿を思い出した。