(余録) ジャマイカやホンジュラスが相次いで核兵器禁止条約を批准し… - 毎日新聞(2020年10月27日)

https://mainichi.jp/articles/20201027/ddm/001/070/091000c

ジャマイカホンジュラスが相次いで核兵器禁止条約を批准し、来年1月の発効が決まった。両国の共通点はラテンアメリカを対象にした世界初の非核地帯条約、トラテロルコ条約(1968年発効)に加盟していることだ。
核戦争の瀬戸際といわれたキューバ危機を教訓にメキシコが主導し、域内での核兵器の実験や製造、配備を全面的に禁止した。欧州の植民地やパナマ運河も絡んだ複雑な交渉だったが、米ソなど核保有国を含めた合意にこぎつけた。
非核地帯条約はその後、南太平洋、東南アジア、アフリカ、中央アジアへと広がった。核兵器禁止条約の署名国や批准国は非核地帯に集中している。米国は発効回避を狙って各国に圧力をかけたとされるが、積み重ねられてきた結束を崩せなかった。
条約は非核地帯を地球全体に広げる意味を持つ。合意形成は容易ではないが、非核地帯条約も当初は非現実的といわれた。メキシコの外交官はワシントンに頻繁に出向いて慎重だった米政府を動かしたそうだ。
実は最初に非核地帯になったのは南極大陸だ。61年発効の南極条約で核爆発の禁止を明記したのだが、この時は日本の貢献も大きかった。反対姿勢を示していた米国を説得する妥協案を示し、合意の道筋をつけた。
日本は今回、米国への配慮もあってか交渉に参加せず、被爆者や参加各国を失望させた。しかし、座視していては状況は変わるまい。締約国会議へのオブザーバー参加も見送るようでは唯一の被爆国の覚悟が問われる。