(政界地獄耳) この国が今優先すべきこと - 日刊スポーツ(2020年10月23日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202010230000118.html

菅内閣は発足早々、日本学術会議の解体をもくろんだのか、それともいうことを聞く学者の重用を見せることで今後のメンバー選出に影響力を見せようとしたのか。いずれも事態は膠着(こうちゃく)状態にある。だがこの問題で懸念されることは政財官学の協力でわが国を再生させコロナ対策とコロナ後の社会の構築をし、世界経済が落ち込む中、疲弊した各国がつくスタートラインに並んで知恵を絞ったところが走り抜けていくという想像ができるかが問われているのではないか。

★政治の個別の問題、各論は各国とも抱えているだろうが、わが国が今優先すべきことの整理はできているだろうか。現在の時代認識と日本の課題を政財官学が共有できるかが試されている。OECDなど各国を比較するデータは下から数えた方が早くなった。既に落日の30年を過ごしてきたわが国が、コロナによる変化の加速を冷静に認識し、制度の劣化と崩壊をどう再構築して立て直すかが急務なのではないか。携帯電話の値下げやハンコ廃止、デジタル化は表層的には国民の支持も得られるだろう。それなら高速道路、電気、ガス、新幹線。値下げすれば政権は人気が出る。

★だがそれは政策などと呼べるものではなく人気取りの材料に他ならない。デジタル化でリモート勤務が増え、生活が便利になるのは政策ではない。よりよい社会を希求するのは政府の当然の仕事である。ところがいま社会は切迫した状況にある。政治家や官僚には見えない、国民の不安や緊張をどう解きほぐすか。今までの考えや価値観を離れて人材育成の仕組みを再構築できるのか。国と地方の関係も劇的に変える必要があるだろう。地方に財源と政策の自由に任せて各自治体の知恵を絞られる。既にコロナ対策で自治体の優劣は判明している。知恵が生き延びさせるのではないか。首相・菅義偉の所信表明の内容を新聞がチラチラと書き始めたが、さまざまな階層を分断してグランドデザインが描けるのか。(K)※敬称略