(筆洗) 小学校や中学校の教室に鉛筆削り器が置かれるようになったのは… - 東京新聞(2020年7月15日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/42683

小学校や中学校の教室に鉛筆削り器が置かれるようになったのは一九六〇年のある事件がきっかけらしい。当時社会党委員長の浅沼稲次郎刺殺事件。犯人は十七歳の少年だった。
少年の刃物による事件という衝撃から刃物追放運動が起こる。鉛筆を削るのに当時の子どもは「肥後守」のような小型ナイフを学校に持ってきていたが、これが心配の種となった。で、教室の鉛筆削り器である。
当時の親は安心したかもしれぬが、本当に良かったのかという意見もある。刃物は使い方を間違えれば危険なもの。取り上げるのは簡単だが、刃物のこわさを子どもが身をもって学ぶ機会が失われたのではないか。そういう考え方である。
文部科学省は中学生が学校に携帯電話を持ち込むことを容認する方針だそうだ。原則禁止だったが、災害時の緊急連絡手段になると方針を変えた。校内での使用は引き続き禁止されるそうだが、中学生は「やったー」か。
SNSによるいじめの心配や学校側の管理負担を思えば慎重論もあるだろう。中学生の約六割がスマホを持つ時代だそうだが、持たない生徒への配慮も必要になる。
持ち込みを認めるのなら、正しい使い方をきちんと手ほどきするしかない。便利だが、使い方次第では、刃物以上に自分や誰かを傷つける危険な道具であることをよく教えたい。ついでに誰がその料金を支払っているかも。