(余録) ハリウッドスターには… - 毎日新聞(2020年7月15日)

https://mainichi.jp/articles/20200715/ddm/001/070/123000c

ハリウッドスターには「成功は本物か」「世間を欺いていないか」と悩む人が少なくないそうだ。アカデミー賞俳優のトム・ハンクスさんも「いつも綱渡りをしていると感じる」と語っている。こうした自己不信を症状とするのが「インポスター症候群」だ。
1970年代に米国の心理学者が提唱した。「インポスター」は詐欺師。成果を上げても自分の実力と思えず、「いつか正体がバレるのでは」と不安になるという。米国の調査では7割の人が似た感情を抱いた経験があるそうだ。
正式な精神疾患ではないが、診断法や治療法も研究されている。男性より女性、特に成功した女性に症状を示す人が多いとされ、ミシェル・オバマ前大統領夫人もその一人と告白している。自分に厳しい人に起きやすいのかもしれない。
この人は「いつかバレる」という不安に駆られたことがあるだろうか。数々の疑惑が指摘されてきたトランプ米大統領だ。めいが出版した暴露本で大学入試の際の「替え玉受験」疑惑が浮上した。
ボルトン大統領補佐官に続く「身内」からの告発だ。大統領選への影響が注目されるが、半世紀以上前の話で具体的な証拠はない。ホワイトハウスは「全くのウソ」と否定した。トランプ氏のイメージが大きく変わるわけではあるまい。
臨床心理学の博士号を持つめいはトランプ氏を明らかな「ナルシシスト」と分析している。野党やメディアから「インポスター」と批判されてきたトランプ氏は同症候群からは最も遠い存在か。