(私説・論説室から) 登校しない子の学舎 - 東京新聞(2020年7月1日)

コロナ禍の中、各地で学校が再開されだした。ランドセルを背負った子どもたちの姿を目にすると少しほっとする。
再開後の学校現場は学習の遅れを取り戻す努力を強いられる。運営をお手伝いする地元の公立小学校でも土曜授業の実施や、夏休みの短縮で対応する。
ただ、心配なことがある。子どもたちは長期休校から一転、学習の詰め込み圧力にさらされることになる。
なんとか踏ん張って学ぶ子も、それに耐えきれず学校に行けなくなるかもしれない。
学校に子どもたちの声が戻っても後戻りしてほしくない取り組みがある。
休校中、各地でオンライン授業が広がりつつあった。その動きが、学校再開で止まってしまわないか懸念している。
教室では発言が少なかった子どもが、オンライン授業では積極的になるケースが見られたそうだ。不登校になっても授業は受けたいとのニーズもあると聞く。
地元では今後の課題のようだが、オンライン授業の併用が各地で定着すれば、学校に行かない選択をした子どもも授業に参加でき、教育を受ける選択肢はもっと増える。
今の学校は登校しないと学べない仕組みだが、学校外で学ぶ選択肢も必要とされている。公教育が「学習機会の保障」と言うのなら、登校しない学舎(まなびや)がほしい。 (鈴木 穣)