(政界地獄耳)「答えられない」フジテレビ - 日刊スポーツ(2020年6月22日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202006220000097.html

★フジテレビと産経新聞社は19日、FNN(フジテレビ系28局)と同新聞社が合同で行ってきた世論調査で不正が見つかったと発表した。電話調査ながら実際には電話をかけていない架空の回答があったといい、19年5月から今年5月までの世論調査での不正は各回で100件以上、14回分で計約2500件に上るという。不正は総調査件数の約17%を占める。両社はこの世論調査結果に基づく放送と記事を全て取り消したという。

★ところがフジテレビはこの問題がなぜ発覚したのか、架空の回答を除いた場合の世論調査結果については「答えられない」としている。同社は「委託先からの不正なデータをチェックできず、誤った情報を放送してしまった責任を痛感しています。今後調査・検証を行い、しかるべき処置を行います」、産経新聞社は「報道機関の重要な役割である世論調査の報道で、読者の皆様に誤った情報をお届けしたことを深くおわび申し上げます」とし、両社は当面世論調査を休止するとした。

★奥歯にものが挟まったような説明だが、どうやら下請けの内部告発があったのではないかと言われている。結局、世論調査を自らの社で行わず、下請け、孫請けに委託して、新聞記者のチェックもないまま紙面や番組に数字だけを躍らせたことになる。世論調査はメディアの客観報道の基礎となるデータで報道機関の信頼の証しだ。内閣支持率だけでなくさまざまな出来事について国民の声を反映させる。各メディアは自分のところで行った世論調査を記事の基礎的かつ根拠として示しながら記事を書く場合もあるし、社の論調に照らして支持が多ければわが意を得たりと大きく扱う。両社はメディアの持つ信頼性を損なうだけでなく、調査自体の在り方まで揺るがした。また記事を取り消すだけでいいのだろうか。フジテレビは「しかるべき処置を行う」というが、信頼回復のためには正直な情報公開が必要ではないのか。総務省は黙ってみているのだろうか。(K)※敬称略