(地獄耳) 都知事選で思い出す青島幸男の都市博中止 - 日刊スポーツ(2020年6月17日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202006170000042.html

都知事選挙が近づくと思い出すのが、93年に鈴木俊一都政で開催を決めていた都市博の中止を公約に掲げて95年の都知事選に青島幸男が出馬。当選して公約通り中止させたことだ。既に日本ではバブル経済が崩壊。その余韻と勢いで組織決定したものの、行政には決まったものを途中でやめるという「思考」も「文化」も「腕力」も「経験」もなかった。周回遅れのイベントや箱もの行政は計画時には最先端でも、完成時には時代遅れのものが多い。

★その教訓は生かせるのか。今回の都知事選挙では複数の候補者が東京五輪の中止を掲げる。永年かけて政府や都庁、歴代知事が尽力したものをやめるなどありえないという声がある一方、既に1年延期しており、それ以上遅れることが現実的に可能かどうかというよりも東京五輪大会組織委員会の理事が「日本や世界経済が大きな打撃を受ける」ことを理由に「中止は絶対に避けなければならない」と言っていることが興味深い。

★今世界はコロナ禍前に決まっていたことや、例年行われてきたことを中止にするなど、あきらめなくてはならないことが続いている。つまりコロナ禍前の社会に戻すことが容易でない社会になっている。それはいつの日か、通常に戻る日が来るのかもしれないが、今はコロナ禍前に「決まっていること」が予定通りできない社会が続いている。五輪については開催したい側の理屈はわかるが、中止にすべきという考えの人たちの合理的な理由を聞いてみる必要があるのではないか。

★その意味ではコロナ前をバブル前に置き換えると、今足踏みをしているリニアモーターカー工事もその1つかもしれない。コロナ禍後の社会はコロナ前の社会に戻るだけではないことも念頭に置くべきだ。(K)※敬称略