(余録) 都市封鎖をせず、欧米各国と一線を画したスウェーデンの… - 毎日新聞(2020年5月25日)

https://mainichi.jp/articles/20200525/ddm/001/070/078000c

都市封鎖をせず、欧米各国と一線を画したスウェーデン新型コロナウイルス対策。「まるでパラレルワールド(並行世界)ですね」。米テレビ局の記者がこう評していたと聞いて、思い出した話がある。
ブラジル人ジャーナリストのクラウディア・ワリンさんが著書で描いた、スウェーデンの政治家たちの日常生活だ。日本でも昨年末、「あなたの知らない政治家の世界 スウェーデンに学ぶ民主主義」(アップルヤード和美訳、新評論)のタイトルで出版された。
本によれば、この国の国会議員は、個人秘書を持たない。通勤には車ではなく電車を使う。議員会館議員宿舎は驚くほど質素で狭い。ほかにも、自宅の掃除やワイシャツのアイロンがけ自慢をする元首相たち、高級ブランドバッグを持っていて非難を浴び手放すことになった議員……。ぜいたくや特権とは縁のない、まるで別世界だ。
スウェーデン在住が長かった友人によると、「ここでは政治家は一般の人と同じということが重要な要件。人の上に立つような特別な存在では政治家としてやっていけない」という。
ひるがえって日本の国会。新型コロナの感染拡大を受け、国会議員の給与を2割削減する法律が通った。月約26万円減って103万円余に。減額してもなお、かなりの高額だ。それが即悪いわけではないが、一般の人の生活実感を理解した働きをしているのかは気になる。
スウェーデンのコロナ対策は賛否両論があるが、政治家の世界は少しうらやましい気がする。