(政界地獄耳) 罰すべきものを罰せない社会に - 日刊スポーツ(2020年5月11日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202005110000037.html

★野党もメディアもコロナ禍一色だが、今週、国会は重大な採決を行う。検察官の定年を延長するだけの法改正を装うが、官邸は検事長・黒川弘務の定年を延長し、検事総長につかせることが政権の保険になると考えているようだ。だが安倍政権は過去に内閣法制局次長・横畠裕介・近藤正春の定年を延長し、後に長官につかせているし、防衛省統合幕僚長・河野克俊の定年も延長させている。

★「余人をもって代え難い」というのはその人材の能力を買ってのことだが、検察官は定年延長を望んでいるのか。法務省や検察官には天下りが少ない。その必要がないのだ。定年すれば弁護士として第2の人生を送れるのでさっさと定年したいと考える検察官も多い。延長を望んでいるのは官邸の方である。この法改正は不要不急のものだが、自民、公明、維新が官邸に言われて推進している。一方、野党は問題提起、反対の理屈も正しいものの、コロナ脳から脱却できず、審議拒否という極めて消極的な抗議でお茶を濁す。新聞も一応の問題点を指摘するもののコロナ問題に紙面を割き、本気で扱う気がない。

★ところがネットの世界では「#検察庁法改正案に抗議します」の投稿が、約380万を超えトレンド入りしている。平時ならばこれほど国民が関心を寄せるテーマではないかもしれないが、三権分立が破壊される。民主主義が危ないといった声がネットにあふれるのは、まさにこのコロナ禍での政府の対応や、さかのぼる森友・加計学園事件での疑惑の官僚たちの逃げ切り方、コロナ禍の中でも社会を覆う、例えばPCR検査を受けられる人とそうでない人、財政支援を受けられる人とそうでない人など上流市民の存在が見え隠れするからだろう。先月25日の産経新聞には元最高検検事・清水勇男の寄稿「検事長定年延長問題 権力に『やりやすい』と思われたら検事は終わり」が掲載された。「罰すべきものは罰する。そんな当たり前のようなことができないような社会になったらおしまいなのである」。ネットの声と元検察幹部の声がシンクロした。(K)※敬称略

 

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2020年4月25日産経新聞最高検検事・清水勇男の寄稿 「検事長定年延長問題 権力に『やりやすい』と思われたら検事は終わり」