(政界地獄耳) 緊急事態宣言延長に基準などなかった? - 日刊スポーツ(2020年5月9日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202005090000073.html

★首相・安倍晋三が4日に発令した5月末までの緊急事態宣言延長の評判が悪い。「収束への1カ月」と言いながら「長期戦を覚悟」という矛盾をはらんでいるし、海外からの批判はPCR検査数の少なさに対する、実際にはもっと感染が広がっているのではないかという疑問だ。専門家たちは取りこぼしはないと防戦一方だが、東京を例にとれば3日は399人に検査して感染者91人、4日は219人して87人。5日は109人して58人。分母を見ずに100人を切っても意味はない。陽性率でいえば40%以上だ。都知事小池百合子は8日の会見で、陽性率の計算の仕方が違うとかわし、むしろ「陽性率とは」を、国の専門家会議に求めた。

★6日夜、ネット番組に出演した首相は「今月半ばをめどに専門家から意見を聞き、宣言を解除するか判断する意向を改めて示したうえで、判断にあたっての基準を専門家に依頼して作成する」とした。そうなると4月の緊急事態宣言を発令する時の基準も、4日の延長宣言にも基準などなかったことになる。翌7日には官房長官菅義偉が会見で畳み掛けるように「今月14日の時点で、専門家が判断すれば、東京や大阪などの『特定警戒都道府県』であっても解除することは可能」だという考えを示し、早期緩和の可能性を強く打ち出した。

★国民民主党小沢一郎ツイッターで「5月末は『宣言は解除するが引き続き自粛はしてください』。おそらくそんなところ。『募ったが募集はしていない』と同じ」「補償・支援が嫌なだけ。担当大臣はついに『知事の裁量』などと逃げ始めた」とし、「科学的判断なき闇雲な解除では何も変わらず、とことん経済が追い込まれ、本格的な復興が無理になる」と指摘した。最終的に東京都が封じ込められるかどうかに、焦点は移りつつある。加えて警戒解除に官邸が引きずられている状況にも、不安が残る。こんな漂流の仕方で大丈夫なのか。(K)※敬称略