(政界地獄耳) 安倍ポエム会見のたびよぎる「人災」 - 日刊スポーツ(2020年5月6日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202005060000030.html

★首相・安倍晋三のポエム会見はますます磨きがかかったといえる。国民としてはこちらの重症度の方が新型コロナより心配だ。「宣言を当初予定通り解除できなかったのはおわびする」「断腸の思い」「ご苦労をおかけしている」「ご協力いただいている」「感謝している」と敬意、感謝、絆。そして新しい生活様式。既に国民1人1人が実践している当たり前になっていることをあたかも経産省の業界行政指導のごとく、うたっている。第2波への警戒を怠らないようにということが言いたい専門家会議を霞が関経産省のフィルターをかけると食事の仕方は向き合わず黙って食え、帰宅時の最初の行動はできるだけ早く着替えてシャワーを浴びろに変わる。

★自衛手段が浸透している国民は、どの県でどの感染状況なら、どの種類の店を、どのような条件で開けていいのかという判断マニュアルに関心がある。警戒を怠れば第2波が来て感染は長期化するだろう。ことに東京はいつまでたっても緩和できないまま、ずるずると長期化するだろう。だからこそ、今はポエムの会見よりも第2波に備えたアビガン・PCR検査試薬大増産、臨時入院病床大量確保に時間とカネを重点配備することをはっきりと国民に伝え、それを優先したいというべきだろう。

★会見の中で「早ければ5月8日には支給」というべきところを8月と言い間違えること自体が首相にとって「断腸の思い」であるべきだ。ネットでは「早ければ」ではなく「多くの国民には」というべきだとの指摘もあった。いろいろ策を巡らしているものの功を奏さないのは官邸と都知事東京五輪実現を優先して新型コロナ対策を後回しにし、全体に軽微に見せようとした初動のミスを隠すためにやっていることばかりだ。首相のポエム会見を聞くたびに人災とか政治の失敗という言葉が頭をよぎる。(K)※敬称略