(政界地獄耳) 通告ない質問答えず…本気度足りない - 日刊スポーツ(2020年5月2日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202005020000119.html

★「本気度が足りない」とは国民民主党森裕子が4月30日の参院予算委員会で首相・安倍晋三厚労相加藤勝信に放った言葉だ。これはPCR検査が受けられない国民の政府の対応への言葉だが、森が「今現在、どのくらいの国民がコロナウイルスに感染しているのか」の問いに閣僚席は黙りこくり知らん顔。ややあって役人が首相に説明し答弁に立つも「現時点の感染者数という質問をいただいていない。質問通告されていないということをまず申し上げたい」と答えた。

★何を基準に全国に緊急事態宣言を出したのか、どういう理由で延長するのか、今トンネルのどのあたりにいるのか、入り口なのか真ん中なのか、8合目なのかの政治的根拠となる現状認識を知りたいという森の質問の趣旨は事前に通告があったか否かではなく、国民の感染の現況、収束のめどについての政治的見通しと、国民にお願いする政府の認識を問うたものだ。そこから逆算して財政的支援や学校の休みの延長が算定されるのであれば、役人が用意した数字が書かれたペーパーではなく、首相としての冷静な認識と覚悟がどこにあるか、政治家であり最高責任者の安倍晋三自身に問われた質問だった。国民がどれくらいコロナに苦しんでいるかの数字ぐらい連日頭に入れておくものではなかろうか。

★首相は参院補正予算が通過すると同時に自民党に、緊急事態宣言延長を説明。専門家会議も国会も関係なく決めた。その根拠も思想も国会では説明できなかったにもかかわらずだ。首相はしばしば質問通告がないからと答弁拒否をする場合がある。国会は「国会審議の活性化及び政治主導の政策決定システムの確立に関する法律」を1999年に成立させた。国会審議の活性化と政治主導を確立させるため官僚が答弁するのではなく政治家が答える仕組みを作った。副大臣を据え国会での答弁ができるようにしたし、政府委員という名の官僚を廃し、議員の議論を優先した。その際、質問通告の仕組みを取り入れたが、首相はその趣旨も目的も理解せず、聞かれないことは答えないとねじ曲げた。確かに本気度が足りない。(K)※敬称略