緊急事態宣言へ 必要性を丁寧に語れ - 東京新聞(2020年4月7日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020040702000202.html
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政府はきょう緊急事態宣言を発令する。改正特別措置法(新型コロナウイルス特措法)に基づく初の措置となる。宣言への国民の理解を広げるには、その必要性を丁寧に説明すべきだ。
政府は、専門家で構成する諮問委員会に、発令に向けて要件を満たしているか判断を求める。諮問委員会が要件を満たすと判断すれば、首相は都道府県を単位とする区域や期間を示し、宣言を出す。
宣言を出すためには(1)国民の生命、健康に重大な被害を与える恐れがある(2)全国的で急速なまん延により国民生活や経済に甚大な影響がある-の二要件を満たす必要がある。
対策を進めるには国民全体の危機感の共有が不可欠だ。
また、発令で対象区域の知事は学校や劇場などの公共施設の使用停止の指示や、臨時医療施設用の建物や土地を所有者の同意なしで使用できるなど私権を制限する権限を持つことになる。
だから、発令には十分な根拠と国民の理解が不可欠になる。政府はまず、専門家の知見も含め根拠を明確に説明すべきだ。
その上で、どこの地域でいつまで個人や企業が何をすれば感染拡大を抑えられるのか。どうなると対策が効果を発揮したとして宣言を解除するのか。その見通しも語るべきだ。ただ、行動制限だけ求めても国民は戸惑うのではないか。
もうひとつ重要な説明を求める。宣言が出れば、欧州のように外出を強制的に規制されるなど、いわゆる都市封鎖が行われるとの誤解が広がっている。
確かに、知事は事業者に対し医療品や食品の収用や保管命令、物資輸送の指示などを出せる。
だが、交通機関を止めたり、外出に罰金を科すなどの規制はできない。宣言は外出や施設利用の自粛要請を法的に根拠づけるもので、求められる対応は発令後も大きく変わるものではない。
誤解を放置すると生活用品の買いだめに走ったり、感染が広がる都市部から地方へ人の移動が増えるなどのパニックが懸念される。不要な混乱は避けたい。政府はこの点を宣言の際に十分に説明し、理解を得る必要がある。
感染拡大防止と同時に重要なのは経済対策である。法的な根拠のある宣言の発令でさらに飲食店の休業など経済活動の停滞が拡大しかねない。
日々の生活を守るためにも個人や企業を支えるのに十分な支援を打ち出すべきだ。