緊急事態宣言 慎重な運用が欠かせない - 信濃毎日新聞(2020年4月7日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200407/KT200406ETI090008000.php
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安倍晋三首相が、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、緊急事態宣言の発令準備を表明した。
改正特別措置法(新型コロナ特措法)に基づく。きょうにも宣言し、8日から効力を発生させる方向だ。
東京や大阪など7都府県が対象になる見込みだ。都内の感染者は5日まで2日連続で100人超となり、累計で千人を上回った。1週間で2・4倍だ。全国も5日まで3日連続300人を超えた。
問題は感染経路が不明の感染者が増えていることだ。爆発的な増加になりかねない。医療現場が対応できなくなれば、死者の増加も懸念される状況である。
緊急事態宣言の発令で、不要不急の外出自粛要請に法的根拠ができる。強制力はないものの、一定の自粛効果は見込めるだろう。学校や映画館などの使用の停止や制限を求めることも可能になる。
宣言には一部の私権の制限を伴う。医薬品などの強制収用のほか、臨時的な医療施設向けの土地や建物の強制使用などだ。運用は慎重であらねばならない。
医療崩壊の防止に必要なら、根拠となる正確な情報を事前に公開する必要がある。法が濫用(らんよう)されていないか国会は十分にチェックしなければならない。検証できるように、宣言の経緯や強制措置に伴う論議の過程を、公文書として記録に残すことも求める。
必要なのは、対象地域の住民が自宅で安心して過ごせる環境をつくることだ。週末の不要不急の外出は意識改革で防げても、通勤を控えるのは簡単ではない。
自宅で仕事をするテレワークが難しい職場もある。非正規労働者は、仕事を休めば収入減に直結する。中小の商業施設も休業が続けば経営が困難になる。
宣言を発令するなら、収入減になっても安心して休業できるように、政府が十分な補償策を同時に示すことが欠かせない。
安倍首相は108兆円規模の緊急経済対策を表明した。現金給付は総額6兆円となる。収入半減などの条件があり、対象は全5800万世帯のうち1千万世帯になる。対象外の世帯は生活が維持できるのか。問題があれば追加の支援も検討する必要があるだろう。
言論の自由にも影響しかねない。NHKなどを指定公共機関として、首相が「必要な指示」をできる。内容は限定されていない。法律上は民放を指定することも可能だ。放送局が政府から独立を保ち、統制の下に置かれないように監視を続けなければならない。