学校の再開指針 安全の基準示すべきだ - 北海道新聞(2020年3月26日)

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/406044
http://archive.today/2020.03.26-004035/https://www.hokkaido-np.co.jp/article/406044

文部科学省は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために一斉休校した小中高校などの再開に向けた指針を通知した。
専門家会議の提言に従って感染拡大地域の休校継続を選択肢に残しつつ、原則として全校再開とし、感染防止の徹底を求めた。
専門家に意見を求めず、安倍晋三首相の政治判断で始めた休校が長引き、課題が膨らんでいるが、方針転換の根拠は明確でない。
再開後に児童生徒や教職員が感染した場合は出席停止とする。しかし、その範囲は自治体が判断するとし、基準は示さなかった。
地域事情を踏まえるのは当然だが、これでは自治体に丸投げしたも同然で、特に感染拡大中の都市部の保護者の不安は拭えまい。
文科省は、せめて判断基準を例示する責任がある。この間の自治体の取り組みを整理し、相談に応える仕組みをつくるべきだ。
指針は、集団感染のリスクを高める「密閉・密集・密着」を回避するよう呼びかけ、毎朝の検温と体調の確認、マスクの着用、教室のこまめな換気などを求めた。
感染症対策としては当たり前の内容で、市中で品薄なマスクや消毒液などの調達さえ現場任せであることに失望を禁じ得ない。
自治体は今後、感染リスクと教育機会の保障のバランスの見極めという難しい判断を迫られる。
その基準こそが求められたはずなのに、文科省は学級閉鎖や休校などのルールを示さなかった。
感染経路を踏まえ個別に対応することで影響を小さくする狙いだが、これでは分散登校を進めた道教育委員会も戸惑うだろう。
学校再開後も、感染終息までは予断を許さない状況が続く。
児童生徒が生活リズムを整え、学習の遅れを無理なく取り戻せるよう、工夫と配慮が求められる。
出席停止や再休校に備えて、学童保育所や子ども食堂など、親子の支援体制も拡充したい。
休校中に学校のタブレット端末を持ち帰らせ、学習支援に生かした自治体もある。長期戦を覚悟し、柔軟に動けるよう、遠隔授業への対応を進めることも必要だ。
懸念されるのは、学校再開で感染症への警戒感が緩むことだ。
専門家会議は、都市部を中心に爆発的な感染拡大が起きる恐れを指摘し、対策の3本柱の一つに市民の行動変容を挙げている。
札幌をはじめ、道内も決して楽観視はできない。対策の手を緩めることなく、一歩ずつ学校の新たな日常をつくっていきたい。