<金口木舌>立ち止まって - 琉球新報(2020年3月20日)

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「誰も助けてくれない/助けられない/私の現在は錯乱している/きっと未来も/ならば/終止符をうとう/解放という名の終止符を」。「南条あや」の名前でウェブ上で日記を公開していた女性が残した詩だ。女性は1999年に18歳で亡くなった

▼日記には小中学校でのいじめを背景に自傷行為などを繰り返す日常がつづられ、同世代の多くの人たちが共感した。女性の死はファンや自殺防止に取り組む人々に衝撃を与えた。日記は書籍化もされた
警察庁の統計で2019年の自殺者数は2万169人。統計開始以来最少だが、沖縄県は29人増の249人だった。増加者数は全国2位だ。10代の自殺は全国的に増加が続く
▼10代の自殺原因で最も多いのは人間関係などの学校問題だ。次いでうつ病などを含む健康問題だった
▼10年前、級友とのトラブルを機に自傷行為などを経験した高校生を取材した。精神科にも通院したが、症状が改善するきっかけはインターネットの掲示板で同じ悩みを抱える人と出会ったことだった。「話を聞いてくれる人がいると楽になる」と話していた
▼身近な人の変化に気付き、声を掛ける。苦しんでいる人を気遣える優しい社会であるべきだ。相談を毎日受け付ける「いのちの電話」もある。追い詰められている人も、一度立ち止まってほしい。話を聞いてくれる人は必ずいる。