(筆洗) 香川県議会が可決したゲーム条例の話 - 東京新聞(2020年3月19日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2020031902000162.html
https://megalodon.jp/2020-0319-0917-57/https://www.tokyo-np.co.jp:443/article/column/hissen/CK2020031902000162.html

「フライドチキンをフォークで食べた観光客、逮捕」。その地元紙の見出しが信じられなかった。逮捕されたのは九十一歳の女性。逮捕にもなぜか大笑いしている。
ジョージア州ゲインズビル市での出来事だ。同市ではフライドチキンは手を油まみれにして食べるべきだとして、ナイフやフォークを使って食べることを一切禁じる条例を一九六一年に制定。女性はこれに触れてしまった。
ご安心を。もちろん実際には逮捕されない。市ぐるみのいたずらである。養鶏が盛んなところでそれを宣伝するため、このいたずら条例を制定したそうだ。これを引き合いに出す失礼を香川県にまずおわびしておく。同県議会が可決したゲーム条例の話である。
ゲームのやり過ぎで日常生活が困難になるゲーム障害から子どもたちを守りたい。その趣旨には賛同しよう。が、罰則なしとはいえ、条例でゲーム利用を一律一日六十分と定め、保護者に順守を求めるというやり方がひっかかる。
ゲームを何時間するか。気になるところとはいえ、やはり、それは子ども自身や家庭内で考え、判断すべき事柄だろう。行政がフライドチキンの食べ方を決めてはなるまい。
香川県は「うどん県」の愛称を使った宣伝で知名度の向上に成功している。ゲーム条例によって、香川県知名度はさらに上がるかもしれない。イメージアップの方は保証はしない。