関電の経営陣 統治の根幹が問われる - 朝日新聞(2020年3月18日)

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経営悪化の責任としてカットしたはずの役員報酬を、会社がこっそり補填(ほてん)する。福井県高浜町の元助役(故人)から多額の金品を受け取り、追加納税することになった元役員らには、その分の穴埋めをする――。
関西電力でまたも驚くべき事実が明らかになった。電気料金値上げを強いられた消費者、そして給与や賞与を減らされた関電従業員への背信であり、社会をあざむく行為である。電力供給を担う公益企業の統治の根幹が厳しく問われている。
関電は東日本大震災後に原発が止まり、12年3月期に赤字へ転落。直ちに役員報酬のカットを始め、19年6月まで続けた。その間(かん)、電気料金を2度値上げし、社員にも痛みを強いた。
報酬補填は16年夏に始まり、元助役との関係が表面化した19年秋までに、18人に計2億6千万円が支払われた。同社には役員が退任後も嘱託として残る慣習があり、「月給」の支払いに上乗せした。このからくりは、金品受領問題を調べた第三者委員会の報告書で指摘された。補填は当時の森詳介会長と八木誠社長の2人で決めたという。
また追加納税分の穴埋めは、それぞれ相談役と会長になっていた両氏と、岩根茂樹前社長=14日に辞任=の3人の協議によるもので、対象とされた4人のうち1人に対し、すでに一部の支払いが済んでいる。
経営首脳の規範意識のなさ、会社法など各種法令の抜け道を探って企業統治を形骸化させる行いに、言葉を失う。
そもそも関電は、元助役からの金品受領について2年前に国税当局の指摘を受け、調査をしながら自ら公表しなかった。社内の取締役を集めた「研修会」なる場で概要が伝えられたが、「公表せず」との判断に誰も異議を唱えなかった。
その研修会に出席していた一人が、今般、副社長から社長に昇格した森本孝氏だ。就任会見で「信頼回復に取り組む」と繰り返したが、人々の胸にどこまで届いたか。旧体制との連続性を優先するような姿勢は、会社そのものの存続を危うくすると肝に銘じるべきだ。
三者委の報告で、原発をめぐる関電と元助役との癒着は、当初いわれていた以上に根深いものであることがわかった。関電側は元助役が関係する複数の会社に次々と工事を約束・発注し、法外な接待を重ねる一方で、75人もの役員・社員が金品を受け取っていた。
刑事告発を受けた検察当局、大阪市を始めとする株主、そして政府、国会。それぞれが与えられている権限に基づき、関電の「闇」を徹底解明する責務を負うことを忘れてはならない。