関西電力の便宜供与 隠蔽構造を徹底解明せよ - 琉球新報(2020年3月17日)

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これで幕引きにしてはならない。隠蔽(いんぺい)構造の解明と是正こそが重要だ。
原発のある福井県高浜町の元助役から関西電力役員が金品を受領した問題を調べた第三者委員会が報告書を発表した。金品受領者は75人、総額は計約3億6千万円相当とし、関電による業者への便宜供与を認定した。
元助役が原発関連工事の利権を握り、関電は原発を維持するため元助役の力を利用していた。持ちつ持たれつの関係だ。関電は被害者ではなく、ゆがんだ構図を生んだ当事者と言える。
報告書によると、1987年から金品受領が始まった。元助役が顧問だったとされる建設会社への税務調査で問題が指摘された。関電は2018年9月に調査報告書をまとめたものの、公表しなかった。
三者委は公表しなかった当時の関電会長ら役員3人の責任は特に重いと断じた。しかし刑事告発については、元助役の死去などで確実な証拠がないとして見送った。還流に使われた金は元々、消費者の電気料金だ。消費者はこの結論に納得するだろうか。
 第三者委は原因究明や再発防止策の策定が目的で、強制力はない。専門家からは、犯罪の可能性がある不祥事の調査に対し、第三者委の設置が手法としてなじまないとの指摘もある。
そもそも任意の調査しかできない第三者委ではなく、司直の手に捜査をゆだねるのが筋ではないか。原発関連工事の発注に関係する公共調達法制や独占禁止法会社法などに照らして、違法性の有無に切り込むべきだ。その結論を踏まえてこそ、再発防止につながる対策が打ち出せ、自浄能力のある企業へと生まれ変わることも可能となろう。
 原発事業は国策によって推進されてきた。本来なら、国会で原因を究明し責任の所在を明確にするべき事案である。だが、第三者委が設置されたことを理由に追及が進んでいない実態がある。第三者委を隠れみのにし、政界や官界に飛び火するのを避けているようにも映る。
今回の問題は税務調査が端緒となり、19年9月、報道によって明らかになった。報道されなければ、闇の中に封じ込められた可能性が高い。関電は説明を尽くさず、政府は目をつぶってきた。原発を巡る、この隠蔽構造こそ徹底的に解明し、改めるべきである。
 今回の第三者委の報告書によって原発政策が利権の温床となっていることが一層鮮明になった。原発マネーを巡る癒着の関係は、他の原発立地自治体にも存在する可能性が十分ある。
原発はひとたび事故が起きれば取り返しのつかない環境汚染を引き起こす。関電の不祥事は、「迷惑施設」であるがゆえの構造的な問題をはらんでいる。原子力に依存しないエネルギー政策への転換こそが、不正を根絶する最善の方法だ。