学童保育 態勢の拡充図る機会に - 信濃毎日新聞(2020年3月15日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200315/KT200313ETI090017000.php
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一斉休校の要請に伴い、子どもの受け皿とされた学童保育や放課後等デイサービスが各地でぎりぎりの運営を余儀なくされている。日ごろから態勢や環境が十分に整えられていない現状が背景にある。そのことにあらためて目を向ける機会にしたい。
新型コロナウイルスの対策として政府は全国で休校を要請するとともに、学童保育は原則開所するよう通知した。共稼ぎやひとり親家庭の小学生が放課後を過ごすため、空き教室などを使って設けられている居場所である。
人手不足の現場の負担をどこまで認識してのことだったのか。職員の勤務をどうにかやり繰りし、春、夏の長期休みと同じように朝から開所したところもある。1人でも休めば回らないといった声が聞かれる。急な要請に、人繰りがつかなかったところも多い。
障害児を受け入れる放課後デイでも、人手不足を理由に保護者が施設側から利用を断られる事例が県内でもあったという。県教委は施設の実情に応じて教職員を派遣することを決めている。
学童保育は近年、利用する子どもが増え、過密化が目立つ。厚生労働省は、おおむね40人以下を一つのまとまりとする基準を示しているが、それを超えているところが4割近くを占める。
待機児童は都市部を中心に1万8千人を超え、受け皿は足りていない。施設や定員を増やしたくても、職員の大半が非正規という不安定な雇用と賃金の低さが働き手の確保を難しくしてきた。2014年の調査では、週5日以上勤務しても年収150万円に満たない人が半数近くに上った。
国は昨年、職員の配置基準を緩和している。従来は40人以内の子どもに対して2人以上を置き、うち1人は支援員の資格研修を修了している必要があったが、自治体の判断で、支援員ではない職員1人だけでも可能にした。それで状況が改善するとは思えない。
学童保育は、異なる年齢の子どもたちとの関わりを通して子どもが成長する場でもある。いじめや虐待といった困難を抱える子を支援につなぐためにも、職員が一人一人に目を配り、丁寧に接することが大事だ。配置基準の緩和はそれを弱める心配がある。
学童保育や放課後デイは、親が安心して預けられ、子どもが豊かな時間を過ごせる場所でなくてはならない。職員の処遇を改善して働き手を確保し、受け入れ態勢を充実するために、財政面での国の支えこそが欠かせない。