(筆洗) アポロ計画の成功に寄与したキャサリン・ジョンソンさんが亡くなった - 東京新聞(2020年2月26日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2020022602000141.html
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米国で一九六六年に放送が始まったテレビドラマの「宇宙大作戦」(スター・トレック)のファンだったそうだ。
理由がある。宇宙船エンタープライズ号の中では国籍も人種もさまざまな男女が働いている。黒人女性ウフーラ大尉も仕事をしている。立派に任務を果たしている。それが黒人女性にはうれしかった。
その人は実際に宇宙を相手に働いていた黒人女性である。米航空宇宙局(NASA)の数学者としてジェミニ計画アポロ計画などの成功に大きく寄与したキャサリン・ジョンソンさんが亡くなった。百一歳。
宇宙開発黎明(れいめい)期。コンピューターの性能も悪い時代、膨大な数字との格闘によって導き出した、この人の正しい軌道計算なしでアポロ11号は月面に無事、着陸できたか。月面着陸に一回で成功できる可能性は五分五分との声もあったが、ジョンソンさんだけは計算の結果に自信を持っていたそうだ。
技師や研究者の黒人比率が極めて低く、黒人差別も強かった当時である。ジョンソンさんらを描いた、映画「ドリーム」に遠く離れた黒人専用トイレを使わされる場面があったが、苦労を知性と意志で乗り越えた。
教え子たちに「必要なのは結果だ」と言い聞かせてきた。「数学では正しいか間違っているか、それがすべて。正しい答えが導き出されれば肌の色は関係ない」。この「計算」もまた間違っていない。

 


NASA躍進の陰にあった黒人女性たちの映画『ドリーム』日本語版予告編