籠池夫妻、有罪 森友疑惑の真相迫れず - 東京新聞(2020年2月20日)

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学校建設を巡り詐欺罪に問われた学校法人「森友学園」前理事長籠池泰典被告と妻に有罪が言い渡された。だが地価値引きの真相や官僚による政権への忖度(そんたく)の有無など疑惑の核心には迫れなかった。
「国有地が八億円余も値引きされて学園側に売却された」「安倍昭恵・首相夫人が一時期、名誉校長になっていた」「首相夫人らの名が消された決裁文書が国会に提出された」「官僚が官邸に忖度して消し、改ざんしたらしい」-。
森友学園が新設を予定した小学校を巡る問題には何かと「?」が多い。一時期「安倍晋三記念小学校」という名で行政に説明していたともいう。安倍首相は国会で「私や妻が関係していたなら、首相も国会議員も辞める」と答弁したこともあった。
国有地の巨額値引きの名目は「地下に埋まる大量のごみの撤去費用」だったが、そのごみの量は不明のまま。首相夫人から首相名で「寄付金百万円」を受け取ったとする籠池被告の国会証言の真偽も宙に浮いている。
この問題では、元国税庁長官ら三十八人が虚偽公文書作成容疑などで刑事告発されたが全員が不起訴。逆に前理事長夫妻は、値引きなどの疑惑と直接関係ない「国などの補助金一億七千万円の不正受給」の疑いで逮捕、起訴された。
疑惑にかかわったとされた三十八人への捜査は事実上終わったため、この裁判が本体をあぶり出す場になるのでは、ともみられた。法廷で被告側は「逮捕は、値引き疑惑から国民の目をそらせる国策捜査」と主張した。
しかし、「値引き」や「忖度」の真相が究明されることはなかった。裁判所は起訴内容について「多くは両被告の強い意向による詐取」と判断し、有罪判決(妻は一部無罪)に至った。
森友疑惑の後、「獣医学部の新設に官邸の関与や官僚の忖度があったのでは」という加計問題、内閣が国家公務員法の解釈を変更して東京高検検事長の定年を延長させた問題など、政権が政策を恣意(しい)的に行っていると疑われる事案が続く。
国会で現在論議されている「桜を見る会」に関連する審議では、公的行事での公私混同のほか、国会での首相のやじや答弁の信ぴょう性への疑いも問われている。
一連の出来事で共通するのは、政権の強引さであり、疑惑への不十分な説明、真摯(しんし)とは言い難い姿勢である。今後も、政権の動きを注視していくべきだろう。