マイナンバー カード強要は不適切だ - 東京新聞(2020年2月3日)

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マイナンバーカードの保有状況を政府が公務員と家族について繰り返し調べている。「強制だ」と反発の声もある。法令では任意が原則である。普及が進まないとはいえ、不適切な手法といえる。
マイナンバーカードがあると、コンビニで住民票の写しや印鑑登録証明書などが受け取れる。確定申告でも自宅で「e-Tax」という電子申請が可能になる。身分証明にも使える-そんな利点がうたわれるが、カードの普及率は一月二十日現在で15・0%である。
利便性があれば、どんどん普及率は高まるはずだ。でも、日常でそれほど住民票などが必要ではないし、政府が宣伝するほど、国民はカードの利便性を感じてはいないのだろう。麻生太郎財務相も昨年、「俺も正直言って、使ったことは一回もない」と語ったことがあるほどだ。
普及が進まないためか、国家公務員と家族には昨年十月と十二月、内閣官房財務省が作成した調査用紙を配布した。地方公務員と家族には、総務省が各自治体に依頼して、昨年六月、十月、十二月の三回調査している。
政府は「あくまで取得の勧奨だ」と説明するが、国家公務員向けの調査用紙には、カードの交付申請をしない理由を問う欄まである。家族に対しても理由を書かせ、かつ複数回にわたり報告させる-これを事実上の「強制」と言わずして何と言うのだろう。
職場によっては管理職らがカード非保有者にだけ繰り返し調査票を配る例もあったという。確かに政府は国民の取得を推進する立場だが、マイナンバーカードの取得は、法令で「その者の申請により交付する」と記されている。あくまで本人の意思に任せる申請主義に基づく。
任意取得が原則なのだ。政府の手法に反発の声が上がるのも当然である。国家公務員の取得率は昨年十月で28%、被扶養者にあたる家族は13・1%である。地方公務員もほぼ同じ数字である。
こんな調査をすれば、カードを持たないことが昇進などの妨げになるかと心配になるし、家族にまで調査を広げるのはゆきすぎである。個人番号制が情報漏えいリスクや超監視国家につながると不安視する声だってあるのだ。
二〇二一年三月から健康保険証の機能も持たせるが、従来の保険証も併用する。カード取得は個人の選択を尊重する原則から逸脱してはいけない。

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