英のEU離脱 国際協調の再確認必要だ - 琉球新報(2020年2月3日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1067738.html
https://megalodon.jp/2020-0203-0932-11/https://ryukyushimpo.jp:443/editorial/entry-1067738.html

英国が欧州連合(EU)から離脱した。壮大な歴史的実験といわれた欧州統合は、大きな曲がり角を迎えた。
ジョンソン首相は離脱を前に「新時代の夜明けだ」と強調し、社会の融和を呼び掛けた。だが英EU関係の行方や国際社会への影響を考えたとき、「新時代」の高揚感は乏しく、不安は拭い切れない。
英国は、離脱に伴う経済や社会の激変緩和のため年末までの「移行期間」に入った。今後はEUとの貿易協定締結に向けた交渉が焦点だが、双方の意見は隔たりが大きく、難航は必至とみられている。
移行期間は双方が同意すれば2年間延長が可能だが、ジョンソン政権は年内の「完全離脱」を公約に昨年末の総選挙で勝利している。交渉の行方は予断を許さない。
英は輸出入額の約半数が対EU取引だ。もし期間内に交渉が妥結できなければ、英やEUの経済や市民生活への影響は避けられまい。世界経済にもマイナスとなろう。「合意なき離脱」による混乱を招くことがないよう双方に冷静な協議を求めたい。
振り返れば、欧州の歴史は戦争の歴史であった。戦争によって領土が何度も変わり、権力争いの下で多くの人々が犠牲となった。ひいては二つの世界大戦に至り、ナチス・ドイツなどの暴走を招いた。
その反省に立ち、不戦と平和を誓い、国家主義を超えた地域の融合、繁栄を目指して欧州の統合は拡大してきた。
英は当初、EUの前身である欧州共同体(EC)に参加していなかったが、1973年に加盟した。以降、欧州統合の動きに接近と反目を繰り返したが、ヒト・モノ・カネの移動を自由にした巨大市場の誕生は英にも貿易や投資などで利益をもたらした。
ただEU拡大後、移民労働者の流入や不況による雇用情勢悪化で反EU色が強まった。2016年の国民投票で離脱派が残留派をわずかに上回り、離脱が決まったが、英社会は分断を深めている。ジョンソン首相は「取り戻した主権」の活用に意欲を示したが、英が世界で今後どう振る舞うのか、注視せねばならない。
世界はグローバル化し、移民・難民問題に揺れている。テロや格差拡大で不安は広がり、大衆迎合主義や排外主義が高まっている。少数者や弱者が憎悪や偏見の対象となり、そうした目は沖縄にも向けられる。一方でトランプ米政権は自国第一を掲げ、ロシアや中国も強権色を強める。
国際社会が戦後築いてきた世界秩序が、今回の英離脱でさらに揺らぐことがあってはならない。欧州と世界の平和と安定は、米軍の世界戦略に振り回される沖縄の展望を切り開く上でも極めて重要であることは言うまでもない。
英国は引き続き地域の発展、共存に向けて大きな責務を負っている。これを機に国際社会も欧州における協調の在り方を再確認し、共に行動していく必要がある。