政治とカネの疑惑 説明放棄許してはならぬ - 琉球新報(2020年1月28日)

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政治家の規範意識がこれほど問われている時はない。
昨年の参院選を巡り、車上運動員に法定上限を超える日当が支払われた公職選挙法違反の疑いで事務所が家宅捜査されたことについて、自民党衆院議員・河井克行前法相と妻の河井案里参院議員は「捜査中」を理由に事実関係の説明を避けている。
克行氏は政治不信を招いたことを謝罪したが、離党や議員辞職を否定し「既に刑事事件として捜査が始まっている。捜査に支障を来してはならない。発言することは控えるべきだと考えている」と述べていた。案里氏も「捜査の区切りがついたところで説明したい」と語り、議員辞職を否定している。
両氏の事務所で働いた元私設秘書が参院選前に労働条件を示されずに雇われ、不当に減給された労働基準法違反の疑いも浮上している。この問題への説明もない。
説明責任を放棄する、こうした態度がまかり通るなら、国会議員のモラルは地に落ちてしまう。
そもそも、自身の潔白を証明するために説明をすることがなぜ捜査の支障になるのか。国民の代表である国会議員が説明を尽くすのは当然の責務だ。やましいことがないのなら国会や記者会見の場で自身の立場を堂々と主張すればいい。
昨年10月には、秘書が地元の有権者に香典を手渡したとされる公選法違反疑惑で菅原一秀衆院議員(自民党)が経済産業相を辞任した。「当局から要請があれば誠意を持って協力する」と繰り返し、事実関係の説明を避けている。
潔白だと言うのなら自ら事実関係を綿密に調べ、疑いが晴れるまで国民に向けて説明を尽くすのが筋だ。それができないなら国民の代表として働く資格はない。議員を辞めてけじめをつけた方がいい。
今や安倍政権下では、疑惑に対して説明をしないことがあしき慣例になってしまった感がある。建設会社からの金銭授受問題を受け2016年に経済再生担当相を辞任した甘利明衆院議員も十分な説明をしないまま復権した。
元閣僚たちのそのような態度を助長しているのが安倍晋三首相だ。「桜を見る会」を巡って、招待者の実態や税金の使い方など、疑惑が深まっているにもかかわらず、廃棄したとされる名簿データの復元や調査・検証に動こうとせず、臭い物にふたをする対応に終始している。
危機的なのは、国民の不信を招いている「桜を見る会」の問題に対し、与党内から事実の解明を求める動きが出てこないことだ。自浄作用が欠如している。
野党は政治家とカネの問題を今国会で厳しく追及する構えだが、一連の不祥事を政争の具と捉えてはいけない。
国民の目線に立って真相を究明していく姿勢が、与野党を問わず全ての議員に求められている。