選択的夫婦別姓 導入へ議論進めるべきだ - 琉球新報(2020年1月26日)

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選択的夫婦別姓の導入を訴えた野党議員の質問に対し、議員席から「だったら結婚しなくていい」とやじが飛んだという。極めて遺憾である。
問題は22日、国民民主党玉木雄一郎代表の衆院代表質問の際に起きた。玉木氏は、若い男性が交際中の女性から「姓を変えないといけないから結婚できない」と言われたとのエピソードを紹介し「夫婦同姓が結婚の障害となっている」と指摘した。その際に、やじが飛んだという。
やじが事実なら夫婦別姓を求める人たちを冷笑し、傷つける発言だ。国会議員として許されまい。玉木氏は、やじを飛ばしたのは自民党の女性議員だったとして「こういう自民党だから少子化が止まらなかった」と批判した。
野党側は自民党に事実関係の確認を求めたが、複数議員の証言として、発言したのは杉田水脈衆院議員だと指摘した。野党有志議員は衆院議長に発言者の特定を求め、「憲法が保障する結婚の自由を否定する暴言だ」と謝罪や発言撤回を促すよう申し入れた。
やじについて、杉田氏は説明をしていない。発言していないのならそう否定するべきであり、もし事実だとするなら、その真意をきちんと説明すべきである。
杉田氏といえば2018年、月刊誌への寄稿で性的少数者(LGBT)を攻撃した人物だ。「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるのか。彼ら彼女らは子どもをつくらない、つまり『生産性』がない」などと持論を展開した。
少数者や弱者の人権を否定し、差別や偏見を助長する信じられない主張だったが、自民党は杉田氏をかばう姿勢を見せ、大きな批判を招いた。今回のやじについては「確認していない」としているが、公党として事実関係をきちんと調査する責任がある。
ただ皮肉にも今回の問題で、選択的夫婦別姓制度に再び焦点が当たることになった。
内閣府が18年2月に公表した世論調査で選択的夫婦別姓制度に賛成する人は過去最高の42・5%だった。反対は29・3%。足元では賛成がさらに増えているのではないか。
選択的夫婦別姓法務省は1996年と2010年に導入の改正法案を準備したが、自民などの保守派が「家族の絆が壊れる」と反対し、提出されていない。強制的に同姓にしないと家族が崩壊する、との主張に説得力はない。
安倍政権下で夫婦別姓の議論は進んでいない。「女性活躍」の看板を掲げるのなら、強制的な同姓により社会で不便や不利益を受けている人の声に耳を傾けるべきだ。
同姓を法律で義務付けているのは世界で日本だけだという。多様な価値観を尊重し、女性の社会進出の障害にもなっている同姓規定の見直しに向け、国会は速やかに議論を進めてもらいたい。もし異論があるのなら、やじではなく、堂々と議論すべきである。