小学校教員の倍率低下 教育の質を確保できるか - 毎日新聞(2019年12月26日)

https://mainichi.jp/articles/20191226/ddm/005/070/092000c
http://archive.today/2019.12.26-001117/https://mainichi.jp/articles/20191226/ddm/005/070/092000c

今年度の教員採用試験で、公立小学校教員の倍率が全国平均で過去最低の2・8倍となった。
新潟県の1・2倍をはじめ2倍を切る自治体も12道県・政令市に上る。ハードルが下がりすぎて教員としての資質に乏しい人材まで採用されたのでは、教育の質を保てない。
倍率の低下はこれで8年連続となる。第2次ベビーブームに対応し、大量採用された教員が退職期を迎えて採用数が増えていることに加え、受験者が減っているのが原因だ。
今回と同じ過去最低の倍率だった1991年度はバブルのさなかで、企業が新卒者を大量採用したことが響いた。文部科学省は、現在の低下傾向にも企業の採用が好調なことが影響しているとみている。
だが、それだけではなかろう。学校職場を巡っては、長時間労働がかねて問題となっている。「モンスターペアレント」への対応に神経をすり減らす教員もいる。そうした「ブラック職場」のイメージが受験者を遠ざけているとみられる。
また、各都道府県などの採用対応の違いも影響している。
文科省によると、低下が目立ったのは退職者数などに応じて場当たり的な採用を続けてきた自治体だ。一方、中長期的な計画に基づいて採用してきた自治体は一定の倍率を維持しているという。その代表が兵庫県で、倍率は最高の6・1倍だった。
各地で教員がいじめへの対応を誤り、深刻な事態を招く例が絶えない。指導力不足の教員が増えれば、子どもの学力だけでなく、学校生活全般に悪影響を及ぼす。
国や自治体は教員希望者を増やすなどして、教育の質を守らなければならない。
まず職場環境の改善が急務だ。学校の働き方改革を着実に進めたい。
また、まだ数年は大量退職が続く見込みのため、今後の採用計画を中長期的視点で立てる必要がある。
さらに、新卒を中心とした従来の採用試験にとどまらず、教職経験者らの特別選考を積極的に実施するなど、より幅広い人材の参入が可能となる仕組みをつくるべきだ。
どういう先生に巡り合うかで、子どもの将来が変わることもある。優れた人材を呼び込むための手立てを尽くさなければならない。