(余録) 北欧のフィンランドに… - 毎日新聞(2019年12月23日)

https://mainichi.jp/articles/20191223/ddm/001/070/112000c
http://archive.today/2019.12.23-002141/https://mainichi.jp/articles/20191223/ddm/001/070/112000c

北欧のフィンランドに「サンタクロース村」がある。毎年、世界各国に「サンタの手紙」が送られる。手紙同様、子どもたちが心待ちにしているのがクリスマスプレゼントだろう。今年は何を、と頭を悩ませている読者もいるかもしれない。
フィンランドでは、子どもを授かった全家庭に政府からプレゼントが贈られる。現金170ユーロ(約2万円)または、ベビー服などが箱詰めされた「育児パッケージ」だ。箱はベビーベッド代わりになり、現金よりパッケージを選ぶ人が多い。
現職として世界最年少首相となった34歳のサンナ・マリーンさんも1児の母。妊娠中の2年前、受け取った育児パッケージの写真をインスタグラムに投稿した。コメント欄に「フィンランドの誇りが届いた。うん、いいね」と書き込んだ。
国連の国別幸福度調査でフィンランドは2年連続の首位である。福祉制度が機能し、人々が自然と共生するライフスタイルを送り、信頼を土台とする社会が成り立っている――ペッカ・オルパナ駐日大使は理由をそう説明する。
マリーンさんは幼少期に両親が離婚し、母親と女性パートナーの家庭で育った。パン屋の店員やレジ係として働きながら苦学の末、大学に進学。地元メディアに「フィンランドの福祉制度と教師が救ってくれた」と述懐する。
日本は幸福度で世界58位どまりだ。今年はフィンランドと外交関係を樹立して100年の節目の年。クリスマスシーズンたけなわ、「サンタのふるさと」から学ぶことは多そうだ。