[大弦小弦]死刑と無期懲役のはざま - 沖縄タイムス(2019年12月20日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/513045
http://web.archive.org/web/20191220010836/https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/513045

人が人をあやめる。それを人が裁く。量刑にある程度の相場はあっても、計算式のように単純に導き出せない

▼例えば死刑と無期懲役を分かつのは何か。36年前、最高裁が一つの指標を示した。有名な永山基準だ。犯行の性質、被害者数、加害者の年齢など9項目を考慮し、どうしてもやむを得ない場合に死刑が許されるとした

▼当時19歳で、4人を射殺した永山則夫元死刑囚を巡り、司法は揺れた。一審は死刑、二審は一転して無期懲役最高裁は二審を破棄して差し戻し、最終的に死刑で確定した

▼おととい、東海道新幹線で3人を殺傷した罪に問われた小島一朗被告(23)に無期懲役が言い渡されたニュースを見て、釈然としないまま永山基準を思い出した。「3人殺せば死刑になるので、2人までにしておこうと思った」「有期刑だったら出所後に必ず人を殺す」。小島被告は公判でこう語り、望み通りの判決になった

▼極貧の少年時代を過ごし、社会からはじき出された永山元死刑囚は、貧困と無知が事件を招いたと世に問い、執筆活動は高い評価を得た。獄中結婚した沖縄出身の女性との交流も、彼を償いへと向かわせた

▼私たちは、人は変われることを知っている。と同時に、変わることの難しさも知っている。小島被告が自らの罪と向き合い、改悛(かいしゅん)する日は訪れるだろうか。(西江昭吾)