(筆洗) 日本の高校一年生の読解力 - 東京新聞(2019年12月5日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2019120502000161.html
https://megalodon.jp/2019-1205-0943-17/https://www.tokyo-np.co.jp:443/article/column/hissen/CK2019120502000161.html

谷川俊太郎さんの詩に「うそとほんと」がある。


うそはほんとによく似てる

ほんとはうそによく似てる

うそとほんとは

双生児

うそはほんととよくまざる

ほんとはうそとよくまざる

うそとほんとは

化合物


五十年以上前の作ながら、本当らしいうそがネットを通じ広がる今の世の中を見事に表しているようでもある。<うその中にほんとを探せ>。情報社会の金言に思える一節もある。現代では、うまく探せない若者が多いらしい。
経済協力開発機構OECD)が三年ごとに実施する学習到達度調査で、日本の高校一年生の読解力の順位と点数が前回を下まわったそうだ。まだ全体の上位にとどまっているとはいえ、弱いとされたのが、情報の真偽を見抜く力であると聞けば、見過ごせない気持ちが強くなる。
真偽が入り交じった情報と弱い読解力の組み合わせが、世の中の動揺や道理に反する不安や怒りを呼び起こしたと思える例は、最近多い。
数時間で大地震が起きるとか、あの話は陰謀であるとか、犯人はこの人であるとか…。危うい情報に引っ掛かりそうになった覚えもあって、調査結果は現実に呼応しているようにみえる。
本を読む生徒に高い読解力があるとする結果も出ているという。生み出されては、複製されて増える不確かな情報の化合物を真、偽に還元する術(すべ)。身につける手がかりにも思える。