教員の働き方改革法案 実効性確保に不安が残る - 毎日新聞(2019年11月27日)

https://mainichi.jp/articles/20191127/ddm/005/070/080000c

公立校の先生の働き方改革の一環として、教職員給与特別措置法(給特法)を改正する案が国会で審議されている。
特に忙しい時期の労働時間を延長する代わりに、その分を夏休み中などに休日としてまとめ取りできるようにする「変形労働時間制」の導入が柱だ。残業時間の上限を月45時間とする指針も法律で明示する。
だが、夏休み中も研修や部活動などに追われる教員が多く、休日のまとめ取りは容易でない。学校現場からは、長時間労働が常態化している現状を追認し、助長させるだけではないかと懸念の声が上がっている。
日本の教員は世界で最も忙しい。改正案が実効性を持つには業務量の削減が伴わなければならないが、現状では対策が不十分だ。
長時間労働がはびこる背景には、教員の担う業務があまりに多岐にわたっている実態がある。そのため、文部科学省は事務作業を補助するスタッフや部活動指導員などの学校への配置を進めている。そうした外部人材の活用を一層広げるべきだ。
自治体単位で意欲的に対策に取り組んでいるところもある。
衆院の委員会で、夏休み中に連続16日間、学校を完全に閉じている岐阜市の例が紹介された。期間中は電話も留守番電話設定にし、緊急の用件は保護者に事前に番号を伝えてある市教委の電話で対応したという。
膨大な業務に手をつけずにやりくりするのでなく、教員を休ませることを前提に業務を選別する発想だ。他の自治体にも参考になるだろう。
ただ、市には保護者の一部から「学校と連絡が取れないのが不安」などの声もあったといい、保護者や地域の理解は欠かせない。夏休み中に行われるスポーツ・文化行事を絞り込むことも大事だ。
教員の働き方にはより根本的な問題がある。公立校の教員には残業代が出ない代わりに一律で基本給の4%が支給されている。これが労働時間管理をずさんにし、残業時間の不正確な把握につながっている。
昨年度の公立小学校の教員採用試験の倍率は全国平均で3・2倍と過去最低だった。教員の仕事の魅力を高めることは喫緊の課題だ。そのためには、教員の給与体系の踏み込んだ見直しが必要だろう。