(政界地獄耳) 内ゲバ民主党に学んだ長期政権の秘訣 - 日刊スポーツ(2019年11月20日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201911200000028.html
http://archive.today/2019.11.20-001501/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201911200000028.html

★首相・安倍晋三の通算在任日数が20日、計2887日となり、歴代最長記録を持つ戦前の政治家、桂太郎を超えた。長期政権を維持することは難しい。自民党の権力の中心であり首相としてすべてをコントロールしていかなくてはならない秘訣(ひけつ)があれば知りたいと首相を狙う政治家は考えるだろう。同時に自分が首相向きか、官房長官向きか、党3役向きかを見つけ出さなくてはならない。安倍は閣僚経験がなく、官房副長官官房長官、党幹事長などの要職はこなしたものの、役人を束ねた経験がない。ここ30年で閣僚経験なしに首相になったのは細川護熙鳩山由紀夫だが、共に政権交代での首相だから比較にはならない。いずれにせよ自民党では極めて異例といえる。安倍は党内で雑巾がけや汗をかいた経験が少なく党内に貸し借りのある議員が少ない。政治手法は党内調整や融和ではなく、敵を切り捨てる1強支配。それで党内は主流派になびいた。

★ではなぜそんな安倍が長期政権を実現できたのか。ひとつは決める官邸を作ったからだ。直前の民主党政権は政治主導をうたいながら決められない政治でしかなかった。決めてくれる官邸は心強く見える。そこを強化したのが内閣人事局で人事を握ったことだ。霞が関は人事で決まる。それまでは中央官庁の官僚は省内の力学に対応して官房長、事務次官、大臣の顔色を見ながら仕事をしていた。ところが長期政権で省内人事はどんどん回転するが官邸官僚はメンバーが動かない。次第に官僚が官邸を向くようになった。首相補佐官首席秘書官・今井尚哉は経産省出身、首相補佐官兼内閣広報官・長谷川栄一も経産省で元中小企業庁長官、官房副長官補兼国家安全保障局次長・林肇は外務省出身と一角(ひとかど)の人物が官邸官僚として首相を支えた。

★また、官僚も一目置く加藤勝信世耕弘成茂木敏充ら政策に明るい議員たちが首相に忠誠を誓う様を見て、官僚は安倍にリーダーの資質を見たのだろう。首相が万能でなくとも、周囲が首相を支える覚悟を持てば政権は強い。首相がよく民主党政権の悪夢を口にするが、まさに内ゲバを繰り返し、首相に敬意を払わない民主党議員たちを横目に安倍は第2次政権の帝王学民主党政権の体たらくから学んだといえる。

★さて今後の首相はどんな未来を見据えているのか。自民党幹部が言う。「あと1年で第2次内閣は佐藤栄作政権の在任記録を超える。当然そこを狙うはずだ」。だが悲願の憲法改正などレガシーづくりは道半ばだ。別の自民党議員は「令和の改元を仕切ったことはレガシーに値する」と褒めるが、あとは本人の意欲と気力だろう。「桜を見る会」疑惑の対応は「森友・加計学園」疑惑の雄弁な説明より自信なさげだ。これも乗り切れば政権は無敵だが、落とし穴も多そうだ。(K)※敬称略