米国のパリ協定離脱 無責任極まりない判断だ - 琉球新報(2019年11月7日)

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各国が協調しなければ温暖化対策は進まない。超大国であればなおさらだ。
地球温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」から離脱すると、米国が国連に正式に通告した。
トランプ大統領は「恐ろしくコストが高くつき、不公平だ」と協定を批判し、石炭の活用を今後も推進すると強調している。いくら二酸化炭素の排出量が増えようが、お構いなしの姿勢である。
トランプ氏が掲げるのは「アメリカ・ファースト」だ。これを突き詰めると、米国さえ良ければ他国はどうなってもいいという究極の利己主義に行き着く。
だが協定からの離脱はそのような自国第一主義とも相いれない。総じて米国に不利益をもたらすことはあっても、利益をもたらすことなど考えられないからだ。
地球温暖化による被害は例外なく世界各国に及ぶ。トランプ氏の判断は、世界の人々に対しても、米国民に対しても無責任極まりない。
異常気象は各地で猛威を振るっている。記録的な熱波、暴風雨、洪水、干ばつ、氷河の融解など、枚挙にいとまがない。いずれも温暖化と関連すると考えられている。
南太平洋の島国ツバルは海面上昇で水没の危機にある。米国でも西部カリフォルニア州で大規模な山火事が相次いでいる。
国連の気候変動に関する政府間パネルIPCC)の特別報告書は、地球温暖化がこのまま進めば今世紀末には海面が1メートル強上昇し、世界の氷河の40%以上が失われる恐れがあると警告している。
パリ協定は今世紀後半に世界の温室効果ガス排出を実質ゼロにし、気温の上昇を産業革命前と比べて2度未満、できれば1・5度に抑えることを目指す。削減目標が各国の自主性に委ねられるなど、実効性に課題はあるが、枠組みの意義は大きい。
米国は、中国に次いで世界2位の温室効果ガス排出国だ。本来なら、国際社会をリードし地球温暖化の問題に率先して取り組むべき立場にある。だからこそ、オバマ前大統領はパリ協定の取りまとめに奔走したのである。
だがトランプ氏は「温暖化はでっち上げだ」と大統領選で発言し、パリ協定からの離脱を表明した。温室効果ガスによる気候変動を「でっち上げ」と決めつけるのは科学に背を向ける態度だ。
どのような仕組みで地球温暖化が進むのか、その結果、どういう事態が起きるのか、トランプ氏はまず学習する必要があるのではないか。正しい知識がなければ正しい判断などできるはずがない。
米国で排出削減が進まなければ、地球温暖化対策の後退を招く。日本を含む各国は声をそろえて米国に翻意を促す必要がある。聞く耳を持たないのなら、国際社会から孤立するだろう。米国に求められるのは理性ある対応だ。