米軍の訓練 「ルール順守」強く迫れ - 朝日新聞(2019年11月2日)

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「日米同盟の維持強化に反する」――。河野太郎防衛相は、自身が明らかにしたこの認識に基づいて、米国側にルールを守るよう迫り、事態の改善を図らなければならない。
沖縄・嘉手納基地で先月末、米軍が日本政府や地元自治体の中止要請を無視してパラシュート降下訓練を強行した。今年になって4回目。しかも危険度の高い夜間に実施された。
この訓練については、本島の西にある伊江島の米軍飛行場に集約するという日米合意がある。河野氏はおととい、米インド太平洋軍司令官に抗議した。今月中旬にはエスパー国防長官と会う予定もあるという。防衛相会談などの場で日本側の強い意思を伝えてもらいたい。
沖縄では、空から下りてくる兵士が基地エリアを外れる事故は珍しくない。かつては車両や物資もしばしば投下され、1965年には小学校5年の女の子が、民家の庭先に落ちてきたトレーラーの下敷きになって死亡する惨事が起きている。
95年の米兵による少女暴行事件を機に、沖縄の負担軽減策のひとつとして本島での降下訓練の伊江島への移転が決まった。だが米軍は嘉手納でも繰り返し、07年にはこれを追認する形で、「例外的な場合」に限っての実施が合意された。
外務省は「例外」が認められるのは、訓練が▽定期的ではない▽小規模▽気象条件が悪いなどの事情で伊江島で行えない▽緊急の必要性がある――といった場合だとしている。
今回の訓練について米軍は、実施を通告した2日前の時点では伊江島悪天候が予想されていたとして、正当性を主張する。しかし実際には当日は好天で、現に別の部隊は島で降下訓練をしていた。河野氏が「例外事由に当たらない」と批判するのは当然である。
「例外」を広げてルールを骨抜きにする米軍の行為は、これだけではない。たとえば深夜・未明の飛行制限の取り決めなどは頻繁に破られる。こうした実態についても河野氏は、米側に是正を迫るべきだ。
加えて伊江島では今回、米兵が基地外に下りる事故が2日続いた。やむなく訓練を受け入れた島民にとって看過できない話で、怒りの声があがっている。
米軍が今もわがもの顔で振る舞えるのは、日米地位協定で基地を自由に使える権限が与えられているからだ。他の条項も含め、協定の見直しはもはや避けて通れない課題である。
降下訓練は東京の横田基地でも行われ、昨年春には中学校の校庭にパラシュートが落下する事故が起きている。決して沖縄だけの問題ではない。