相次ぐ閣僚辞任 政権のおごりが招いた - 東京新聞(2019年11月1日)

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河井克行法相が、妻の選挙運動を巡る公選法違反疑惑などに関する週刊誌報道を受けて辞任した。菅原一秀経済産業相に続く二週連続の閣僚辞任は、長期政権のおごりや緩み、歪(ひず)みの表れである。
またも閣僚に関連した公職選挙法違反疑惑である。七月の参院選で初当選した河井案里参院議員の選挙運動で、運動員に日当として法定上限の一万五千円を超える三万円を支払っていたと、週刊文春が報道した。河井氏自身も、事務所が有権者にジャガイモなどの贈答品を配った疑惑があるという。事実なら、いずれも公選法違反に当たる可能性がある。
それ自体は見過ごせない選挙違反であり、捜査当局が徹底的に捜査すべき事案だ。河井氏が菅義偉官房長官安倍晋三首相と近しい関係だからといって、捜査の手を緩める忖度(そんたく)があってはならない。
とはいえ、なぜ案里氏の議員辞職ではなく、河井氏の閣僚辞任なのか。夫婦とはいえ別人格だ。妻の選挙運動を、河井氏が実質的に取り仕切り、河井氏自身の責任が免れないということなのか。いずれにしても説明が足りない。
案里氏が当選した参院広島選挙区(改選数二)には、自民党から現職だった溝手顕正参院議員会長も立候補して落選した。二議席独占を名目に新人の案里氏を擁立した背景には、安倍首相に批判的だった溝手氏をけん制する狙いがあった、とも指摘される。
政権に批判的な言動を抑え込もうとして無理な選挙運動を強いたのなら、背景にある政権中枢の強引さを指摘せざるを得ない。
自民党が政権復帰した二〇一二年の第二次安倍内閣発足以降、辞任した閣僚は河井氏で十人目。今年九月に発足した第四次安倍再改造内閣では、公設秘書が地元の支援者の通夜で香典を渡すなど公選法違反の疑いで、菅原氏が二十五日に辞任したばかりである。
河井氏も菅原氏も、国会で自らが出席する委員会の開催当日朝に辞任した。野党から追及の機会を奪うのが狙いではないのか。辞任で説明責任が免除されるわけではない。
首相は法相辞任を受けて「任命したのは私だ。責任を痛感している」と陳謝したが、自身の任命責任については、相変わらず「国民の信頼を回復し、行政を前に進めることで責任を果たしたい」と述べるだけだ。
責任があると言いながら、責任を具体的には取ろうとしない。そうした「無責任体質」にこそ、長期政権の驕慢(きょうまん)さが表れている。