(政界地獄耳) 今だけカネだけ自分だけ - 日刊スポーツ(2019年10月5日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201910050000124.html
http://archive.today/2019.10.05-002325/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201910050000124.html

★国会では関西電力役員らの金品受領問題が主要なテーマになろうとしているが、政治とカネという倫理観のない政財界には学習という文字がないからだろう。だが本当にこんな解決しない議論と追及を重ねていていいのだろうか。無論、この問題を含め独裁的、強権的に政権を維持し、国内外の優先順位などお構いなしに権力の周辺にだけ恩恵が行き届くような政治を進める政権への糾弾は必要だ。

★しかし、不毛な政治論戦の中で政治家が気付かなくても国民はこの国がおかしくなっている、秩序や常識が崩れはじめていることをニュースの中で連日目の当たりにする。2日夜にJR新宿駅で起きた人身事故。死亡したのは全盲ブラインドサッカー元日本代表選手・石井宏幸さんだった。ホームでは、スマートフォンで掛けられたブルーシートの中を撮影しようとする人がいて、駅員がアナウンスで撮影をやめるよう呼びかけたという。あおり運転の映像がメディアで募集され連日テレビやネット上に投稿され、誰もがインスタ映えを狙うスクープカメラマンになる。

★台風の被害はなかなか解決しない。行政は想像力を失い、災害の予防や予知、それに伴い予算措置もまともに想定できず「想定外の出来事」というが、政治と行政の想像力の欠如が災害を人災に変えてきた例は今までもたくさんある。つまり国家の基礎である危機管理能力が国力の疲弊と国民のその場しのぎの社会に慣れたことで衰退したと考えるべきだ。妙な道徳の教科書を押し付け、ヤジを放てば無実の罪で連行され、政権に近い人物は死亡者を出す交通事故を起こしても逮捕すらされない。公文書は改ざん、黒塗り当たり前。今だけカネだけ自分だけの駄目な国に成り下がった我が国を立派な先進国と自慢しているのは、政権と財界とテレビ局だけというお粗末な状況を政治は直視すべきではないか。(K)※敬称略