外国人の就学 社会の姿勢が問われる - 朝日新聞(2019年10月4日)

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制度のすき間に落ち、社会に疎外感を抱きながら成長していく――。そんな状態を放置しておいていいはずがない。
小中学校に通う年齢なのに、どこにも就学していない外国籍の子が、2万人近くいる可能性があるという。文部科学省が全国の教育委員会を通じて調べた。住民基本台帳にはその年代の子が約12万人登録されているから、6人に1人が学校教育から閉めだされている計算だ。
もっとも、「不就学」がはっきり確認できたのは1千人だけで、残りの約1万9千人は、そもそも教委が子どもの存在を把握していなかったり、保護者に接触できなかったりで、実態はわかっていない。正確な状況をつかめないこと自体が、問題の深刻さを映し出す。
しかも、こうした外国人の家庭に対し、多くの市区町村が就学を促す働きかけを行っていない。また、入学前に送る案内も日本語だけで表記している例が珍しくなく、送付すらしていないところもある。
こうした消極的な対応の背景には、外国人の児童を就学させる義務を定めた法律がないことがある。だが、国際人権規約は「すべての者」に教育機会を与えるよう加盟国に求めている。どの国に住もうと、子どもには教育を受ける権利がある。
政府・国会はすみやかに制度の見直しに取りかかるべきだ。各教委もまた、国際交流を担当する他部局や民間団体の力も借り、対象者に通知するなどして就学に道を開く責務がある。
教委側の事情もわからないではない。不就学の子を探し出しても、対応できる教師や通訳の数は少なく、支援のための予算も限られる。実際、学校に来ても日本語がわからず、授業についていけないまま姿を消してしまう子もいる。国は市区町村に対応を迫るだけでなく、人材の育成・雇用に必要な財政支援を惜しんではならない。
少子高齢化の対策として、安倍政権は外国人労働者の受け入れ拡大にかじを切った。今後、日本に定住し、長じてその一員として社会を支える外国籍の子が増えてゆくのは間違いない。生活や仕事の基礎を身につけるには教育が不可欠だ。
文科省の別の調査によると、日本語が母語でない高校生の中退率は平均の7倍以上で、非正規職に就く率や、進学も就職もしない割合も高い。安定した仕事をもたない若者が増えれば、影響は社会保障など各方面に及ぶ。外国籍の子の学びを保障することは、当人はもちろん、社会全体の利益につながる。
外国人を仲間として迎え入れ、真の共生社会を築けるか。国のあり方が問われている。