米軍の民間港使用 自粛要請に応じるべきだ - 琉球新報(2019年9月16日)

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在沖米海兵隊が17日と21日に本部町本部港を使用すると県側に通告した。米軍伊江島補助飛行場での訓練に必要だとして海兵隊の船舶を出入港させる計画だという。民間港である本部港の軍事利用は認められない。
港湾管理者の県によると海兵隊は10日、本部港管理事務所に港使用の通告書を提出した。これに対し県は11日と13日の2度にわたり口頭で使用を自粛するよう求めたが、海兵隊は応じない姿勢を示したという。甚だ遺憾だ。
離島県の沖縄にとって民間空港・港湾は住民の移動や物資の流通を支えるライフラインだ。産業・経済活動の大切な拠点でもある。特に本部港は本島北部の観光地が集積する周辺環境や自然景観の美しさも相まって高く評価されており、海外クルーズ船の寄港地としても整備が進む。
県が今回、米軍の使用通告に対して「住民が不安がる恐れがあるほか、一般の船舶が使用するので民間港湾の使用は控えてほしい」と求めたのは至極当然のことだ。
県によると米軍が本部港を使用したことはない。今回は、うるま市沖でのパラシュート降下訓練の救助用で活用している全長約10メートルのゴムボートを使用する計画で、伊江島での降下訓練に参加させる目的があるとみられている。
伊江島補助飛行場には昨年、強襲揚陸艦の飛行甲板を模した着陸帯「LHDデッキ」が完成している。伊江島での米軍訓練激化の動きと併せて対岸である本部港の使用通告に注視する必要もあろう。
過去に米軍船舶が使用した県内の民間港は4港だ。海軍の掃海艦が2007年6月に祖納港(与那国町)、09年4月に石垣港(石垣市)、10年9月に平良港宮古島市)に入港した。16年には1月、10月に伊江港(伊江村)に米陸軍の揚陸艇が入港している。
海軍掃海艦が07~10年に先島の各島に寄港した際に米軍は「親善・友好訪問」や「乗組員の休養」を理由に掲げていた。いずれも県や地元自治体が反対する中で寄港を強行した。「親善・友好」とは懸け離れた傲慢(ごうまん)な行動だったが、実際には水深や形状などをつぶさに調べるなど有事を想定した事実上の軍事利用であったことが明らかになっている。
米軍が民間の空港・港湾を使用するのは日米地位協定に基づいている。日米防衛協力指針では有事の際のその運用拡大も打ち出されている。過重な基地を背負う沖縄にこれ以上軍事拠点を増やすことは到底許されない。米軍の特権的地位を保障した地位協定の改定も改めて問われる。
米軍の民間空港・港湾の使用は緊急時などに限定すべきであり、県の要請を受け入れて本部港の使用は断念してもらいたい。県は日本政府にも自粛について申し入れている。沖縄の基地負担軽減が政権の「最重要課題」と繰り返すのであれば、少しは結果を見せるべきではないか。