(筆洗)千葉県の大規模停電 - 東京新聞(2019年9月15日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2019091502000137.html
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終戦直後、電気事情は極端に悪化し、停電は日常茶飯事だった。一九四七(昭和二十二)年放送の三木鶏郎のラジオコントにこんなのがある。女「シャルル・ボワイエってすてきね。あら停電だわ」。館内のアナウンス「停電のため、少々、お待ちください」。男「今夜の映画は停電するわけがないんだがな」。女「どうして」。男「だって、『ガス燈』だもの-」
天気予報ならぬ「電気予報」というコントもある。「関東地方は南方に発生した低電圧のため、電気は当分ぐずつくでしょう。東京地方、今晩は送電後停電。明日はついたり消えたりでしょう」
この伝でいえば「千葉県の停電は全面復旧まで二週間はかかるでしょう」となるのだろうが、まったく笑えぬ。台風15号による千葉県の大規模停電である。
現地が心配である。電気なしの生活が既に一週間近い。終戦直後の「ついたり消えたり」の方が電気を使える時間がある分、まだマシだろう。
エアコンが使用できず、熱中症で亡くなった方もいる。テレビ、携帯電話、調理具、冷蔵庫。現在のわれわれの生活は終戦直後とは比べものにならぬほど電力に頼っており、電気なしの生活は生命にかかわってくる。
損傷した電柱は約二千本。倒木なども作業を阻んでいるが、「二週間」の「電気予報」を一日でも短縮できる方法はないものか。台風のシーズンはまだ続く。