[窓落下ヘリ飛行再開]緊張感欠く日米の対応 - 沖縄タイムス(2019年9月10日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/468888
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事故原因も分からず、再発防止策も示されないまま、同型ヘリの飛行が7日、再開された。県や宜野湾市の要請を無視し、県民への配慮を欠いた対応である。
米軍普天間飛行場所属のCH53E大型輸送ヘリが本島東沖の海上に窓を落下させたのは先月27日。県に通報があったのは2日後の29日だった。
この間、県は政府や米軍に同型機の運用を1週間停止した上で徹底した原因究明と実効性のある再発防止策を求めていた。宜野湾市も安全確認ができるまで全機種の飛行停止を要請していた。
にもかかわらず機体の老朽化に伴う事故なのか、人為的整備ミスなのかさえ知らされず、通報の遅れの検証もされないまま。あまりにも一方的な飛行再開である。
窓が海に落ちただけで被害はない、訓練にはありがちな事故-だとし問題視していないのかもしれない。
2016年12月、名護市安部の海岸に海兵隊オスプレイが墜落した際、在沖米軍のトップが「県民や住宅に被害を与えなかったことは感謝されるべきだ」と、パイロットの技量をたたえたことを思い出す。
今回、被害がないことを理由に、岩屋毅防衛相も飛行自粛要請に踏み込まなかった。
「軍の論理」を優先する米軍。米軍に従属的な姿勢をとり続ける政府。被害を受けるのはいつも決まって住民である。
普天間のCH53Eヘリはこれまでもたびたび事故を起こしてきた。人身被害が発生してからでは遅い。

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CH53Eは古いタイプのヘリで、イラクなどでの戦闘にも投入されてきた。老朽化が著しいが、後継機の開発は遅れ、飛行可能な同型機は「37%にすぎない」ともいわれている。
国防予算削減の中で老朽化した機体を酷使し続ければ、どういう事態を招くのか、素人でも容易に想像できる。
ここへ来て日米両政府で合意済みの在沖海兵隊のグアム移転計画のさらなる遅れも明らかになっている。当初の14年から大幅にずれ込み、米国防総省は25年秋以降としている。
普天間飛行場の移設先である名護市辺野古の新基地建設は、軟弱地盤の改良工事で長期化が避けられなくなった。工期も経費も依然としてはっきりしない。
その一方で普天間の離着陸回数は外来機を中心に増加傾向にある。

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市街地のど真ん中にある「世界一危険」な基地を返還するというのがそもそもの目的だったはずなのに、辺野古に新基地を造ることが自己目的化し、普天間の一日も早い危険性除去は完全に破綻してしまった。
辺野古代替案でなく、普天間の運用停止を早急に実現し、不公平な基地負担を解消するのが政治の仕事である。
本土では「辺野古は終わった」という空気が広がっている。停滞した状況を打ち破り、計画見直しにつなげるためには、県内世論をもう一度糾合し、米議会を動かす必要がある。