開かれぬ国会 政権は論戦に応じよ - 朝日新聞(2019年9月4日)

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通常国会が閉会してから2カ月が過ぎた。内外の課題が山積しているというのに、政府・与党はいつまで国会の夏休みを続けるつもりなのか。臨時国会を早期に開き、国民の前で徹底した議論を始めるべきだ。
政府・与党は、臨時国会の召集日を10月4日で調整している。来週の内閣改造自民党役員人事や安倍首相の国連総会出席などの外交日程を考慮し、9月中の開会は見送る。野党が求める閉会中審査にも応じるそぶりはない。
7月の参院選後に開かれた臨時国会の会期はごく短く、参院の正副議長を選出するなどしただけで、実質審議は行われなかった。このままでは、論戦の「空白」は3カ月以上に及ぶ。立法府に期待される行政監視の実をあげることもできない。
この間、日韓関係は徴用工問題や輸出規制強化をめぐって悪化の一途をたどり、韓国による日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA〈ジーソミア〉)の破棄に至った。対立のエスカレートを避け、関係改善への糸口を探るのは政治の責務である。
安倍首相とトランプ大統領が大枠で合意した日米貿易交渉は、肝心の中身が明らかになっていない。国民生活に直結する通商問題で日本が何を譲り、何を得たのか――。9月下旬で調整中の貿易協定への署名の前に議論するのは当然だ。
行政への信頼を土台から傷つけた森友・加計問題の解明も進んでいない。先月、大阪地検特捜部が森友関連の捜査を終結させた。「刑事訴追のおそれ」を理由に証言を拒否した佐川宣寿(のぶひさ)・元財務省理財局長に改めて国会で説明を求めることが、信頼回復への出発点となろう。
10月1日に迫った消費増税への対応や、ようやく公表された財政検証に基づく年金改革などの重要テーマも控えている。口利き疑惑で厚生労働政務官を辞任した議員や、糾弾決議を受けながら「戦争」発言を繰り返した議員への対応も問われる。
にもかかわらず、国会での説明責任を軽視し、論戦に後ろ向きなのは、安倍政権の一貫した姿勢といえる。野党が憲法に基づいて臨時国会の召集を要求しても、国会の規則にのっとって予算委員会の開催を求めても、無視を決め込んできた。
それでいて首相が、憲法改正の議論については、野党に強く協力を求めるというのは、ご都合主義というほかあるまい。参院選後に朝日新聞が行った世論調査では、首相に一番力を入れてほしい政策は「年金などの社会保障」が38%で最も高く、「憲法改正」は3%だった。いま何を議論すべきか、優先順位を見誤ってはいけない。