ネットのデマ 批判的読解力が必要だ - 琉球新報(2019年8月27日)

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誰でも被害者になり得る問題として社会全体で考え、再発防止に本腰を入れるべきだ。ネットのデマによる損害や人権侵害のことである。
茨城県常磐自動車道で起きたあおり殴打事件を巡り、容疑者と無関係の女性が「同乗していた女」とインターネット上で名指しされ、中傷の書き込みが相次いだ。
被害に遭った女性は記者会見し「軽い気持ちでデマを拡散することの怖さをしっかり考えてほしい」と訴えた。女性の弁護士は情報の発信や拡散に関わった人物の特定を進め、損害賠償請求訴訟や刑事告訴を準備している。
2017年には全国各地の弁護士が、ネット上の特定のブログの呼び掛けに賛同した人々から計約13万件に上る懲戒請求を受けた。各地の弁護士会が16年に朝鮮学校への補助金停止に反対する声明を発表したことが発端だが、声明に関わっていない弁護士も請求を受けた。
ブログには書式が用意され、呼び掛けに応じた読者が見ず知らずの弁護士名が記載された書面に記名、押印するケースが多かった。961件の懲戒請求を受けた沖縄弁護士会は「事実に基づかない不当な請求」と抗議する声明を出した。根拠もなく懲戒を請求した人に対する訴訟が全国で起き、裁判所が請求者に損害賠償を命じるなど弁護士側勝訴の判決が相次いでいる。
今月には、車のスピード違反容疑の男性が「上申書を出せば違反逃れができる」というネット上の虚偽情報を信じ、出頭要請を拒んで逮捕された。「違反逃れ」のデマがネット上で出回っていた。
発信者が情報の根拠や事実を確認しないままデマを流し、それを真に受けた人が誤った情報を広げた結果、虚偽や根拠のない情報を基に誹謗(ひぼう)中傷をしたり違法行為を犯したりする事態を招いている。
書き込みに違法性がある場合はサイト管理者やプロバイダーに削除を要請できるし、裁判所に削除の仮処分命令を申請する方法もある。しかし、書き込みが次々と拡散する中では、いたちごっこに終始しがちだ。
最も重要なのはネット利用者一人一人がメディアリテラシーを身に付けることだ。この概念は、さまざまなメディアを使いこなす能力とされる一方、情報を批判的に読み解く力として必要性が指摘されている。
情報の根拠や真偽を見極める力である。発信者本人が調査して得た一次情報か、それとも誰かから得た二次情報か、情報元が不明な三次情報か。発信元は誰で、どのような背景があり、狙いは何か。人をおとしめる悪意や印象操作の可能性はないか。これらを疑うことが重要になる。
現代社会にとってインターネットは生活上、欠かせない。ネット上にあふれる情報を正しく有効活用するためにも、この能力を子どものころから培う必要がある。