防衛費の要求 必要最小限の装備なのか - 信濃毎日新聞(2019年8月8日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190808/KT190807ETI090005000.php
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防衛省が2020年度予算の概算要求で、過去最大の5兆3千億円超を計上する方針を固めた。過去最大を更新した19年度当初予算を上回る。
借金頼みで財政再建は不可欠だ。高齢化に伴う社会保障費が膨らみ、景気の先行きが見通せない中で経済対策も必要になる。それなのに、第2次安倍政権が発足した後、防衛費は7年連続して増えており、膨張が止まらない。
昨年末に策定した中期防衛力整備計画(中期防)では、19年度から5年間の防衛予算総額を過去最大の27兆4700億円程度と見込む。伸び率は従来の年平均0・8%から1%超に拡大している。
防衛費を聖域とし、野放図に増やし続けることは認められない。必要最小限の装備にとどまっているのか。予算編成の段階で、要求された装備の妥当性を吟味し、検証していかねばならない。
概算要求では、宇宙やサイバー空間など新領域の強化や、最新鋭ステルス戦闘機F35を含む米国製の防衛装備品の調達などを見込んでいるという。
懸念がある項目が多い。宇宙空間は陸海空に次ぐ「第4の戦場」とされる。サイバー空間への対応も課題ではある。
日米の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)は4月の共同文書で、新領域での連携強化を盛り込んだ。念頭にあるのは、ロシアや中国が新領域へ進出を図っていることだ。
防衛省は「サイバー防衛隊」を既に設立しており、22年度には航空自衛隊に「宇宙領域専門部隊」の創設を予定している。米軍との一体運用で軍拡競争に日本が加担し、助長することにならないか。
F35の必要性も疑問が残る。レーダーで捉えにくいステルス性に優れた最新鋭戦闘機で、「第5世代機」と呼ばれる。
安倍政権は計147機配備する方針だ。専守防衛の日本にこれほど必要なのか。4月には空自三沢基地のF35Aが青森県沖で消息を絶った。機体の大半を回収できず原因は必ずしも明確になっていない。安全性への懸念も残る。
空軍用のA型1機で100億円超だ。貿易交渉で米側の輸入圧力をかわし、トランプ米大統領に取り入るための大量購入との見方もある。米側の提示額を受け入れる制度「対外有償軍事援助(FMS)」も高額になる原因だ。改善を進めなければならない。
地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」も必要性を含めて議論をやり直すべきである。