<金口木舌>8月6日、伊江島と広島 - 琉球新報(2019年8月5日)

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あす全国高校野球選手権大会が開幕する。かつては県勢の試合開始とともに歩行者や車が街頭や道路から消え、甲子園のテレビ中継を見るのが風物詩だった。今はスマートフォンでも視聴できる便利な時代だ

▼県民が街から消えるといえば、こちらの方が多い。戦争による負の遺産、不発弾処理だ。その周辺では避難が実施され、不便を強いられる。人でにぎわう国際通りが封鎖されることもある
▼県出身のBEGINの歌「オバー自慢の爆弾鍋」では沖縄に降り注いだ砲弾を鍋に変え、生きる糧にした戦後の暮らしを伝える。同曲を題材にしたドラマが7日、NHKBSプレミアムで放映される
▼歌は県民のたくましさを描くが、事実はそれだけではない。朝鮮戦争に伴う1950年代のスクラップブームでは集めた鉄くずの中に不発弾もあり、誤爆で命を落とす人もいた
▼48年8月6日、戦後最大の不発弾爆発事故が伊江島で起きた。米軍弾薬処理船(LCT)に積んだ不発弾などが爆発し、居合わせた船客や島民、乗員ら102人が死亡し、76人が負傷した
▼体験者や遺族は「8月6日は広島の原爆の日で知られるが、伊江の事故も忘れないで」と願う。今も不発弾は潜み命を脅かす。伊江港にある被爆慰霊碑は刻む。「二度とこのような惨劇が起こらない平和社会の建設を」。その思いが消え去ってはならない。