福島第2原発廃炉へ 地元の復興向け道筋示せ - 琉球新報(2019年7月26日)

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福島県が求める県内原発10基全ての廃炉が、ようやく決まった。未曽有の原発事故から福島県が復興を遂げるために、原発を推進してきた国と東京電力は責任を持って全基廃炉への着実な道筋を示さなければならない。
東京電力の小早川智明社長が、東電福島第2原発の全4基を廃炉にする方針を福島県の内堀雅雄知事に伝えた。既に廃炉作業に入っている福島第1原発の6基と合わせ、県内全基廃炉の正式な表明となった。だが東日本大震災から8年余り。遅すぎる表明だ。
福島第2原発は、地震津波炉心溶融を起こした福島第1原発の南約12キロにある。
第2原発地震で全4基が自動停止し、東電は放射性物質を含んだ気体を外部に放出して圧力を下げる「ベント」の準備を迫られた。ベント前に原子炉の冷温停止に成功して第1原発のような事故には至らなかったが、一歩間違えれば同様の過酷事故に発展する恐れがあった。
福島県福島県議会は復興の妨げになっているとして、第1、第2の早期廃炉を国と東電に求めてきた。炉心溶融を免れた第2原発だが再稼働に地元の同意を得られる見通しはなく、東電には廃炉しか選択肢がなかった。
正式な表明に至ったとはいえ原発廃炉は30年から40年かかるとされ、これから長い道のりとなる。しかも巨額な費用や作業員の確保など、解決が先送りになっている難題がいくつも待ち構える。
原子炉内の核燃料が溶け落ち、いまだに事故が収束しない第1原発は8兆円の廃炉費用が試算されている。第2原発廃炉は第1原発ほど難しさはないものの、2800億円の費用が見込まれる。
さらに、第2原発内にある使用済み核燃料の行き場も課題だ。東電は使用済み核燃料の運び出し先を他に確保できず、第2原発敷地内に貯蔵施設を新設して保管する方針を福島県側に伝えた。
東電は、使用済み核燃料は廃炉作業終了までに全て県外に搬出すると説明したが、他の自治体から同意を得られる見通しはない。使用済み核燃料の保管が長期化すれば原発の危険が除去されたとは言えず、廃炉表明を手放しで評価できないものにしている。
第2原発が立地する楢葉町富岡町では、廃炉に伴い国の原発関連交付金が減少していく。財政の打撃に加え、新たな貯蔵施設の建設を受け入れるかどうかの判断は厳しいものになる。全町避難を経験し、復興の途上にある両町にこれ以上の犠牲を強いない支援と配慮が必要だ。
原発はひとたび重大事故が発生すると、取り返しのつかない環境汚染を引き起こす。補助金と引き替えに原発立地を地方に押し付けてきた政策の在り方も問われる。福島県の全基廃炉を成し遂げるためにも、政府は原発に依存しないエネルギー政策への転換をしっかりと打ち出すべきだ。