[参院選 全国では] 国会にも多様性の波が - 沖縄タイムス(2019年7月23日)

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今回の参院選は全国的に見れば、政治の閉塞(へいそく)感が漂う選挙だった。論戦は最後までかみ合わず、投票率は5割を切った。
そんな中で特徴的だったのは「多様性を尊重する社会」への新たな息吹が感じられたことだ。
山本太郎代表率いる「れいわ新選組」は4月に組織を立ち上げたばかりなのに、消費税廃止などの政策で「台風の目」となり、比例区で2議席を獲得した。
当選したのは、難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」患者の船後靖彦さんと、重度障がい者の木村英子さん。
当事者が国会で障がい者政策の議論に加わり、さらに議員活動を通して現場の声を国政に反映させることは、大きなインパクトを持つ。
立憲民主党からは、同性愛者であることを公表し性的少数者(LGBT)の権利保障などに取り組む石川大我さんが初当選を果たした。
女性の当選者も28人となり過去最多の前回に並んだ。 
多様性を尊重し未来を切り開こうとの訴えが、有権者の心をつかんだといえる。議員の世襲化が進む中にあって、社会の多様性を国会に反映させることは重要だ。
国会に吹いた新しい風は、政権交代の期待が薄らいでいることの表れでもある。れいわの躍進が示すのは、多様な声を吸い上げてこなかった既成政党に対する不信だ。
次期衆院選に向けて、野党が新興政治勢力とどのように連携するか。野党がバラバラでは政権を追い込むような戦いは望めない。

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もう一つの大きなポイントは、「改憲勢力」が国会発議に必要な3分の2を割り込んだことだ。
安倍晋三首相は投開票を受けての記者会見で「国民民主党の中に、議論すべきだと考えている人がたくさんいる」と述べ、同党の参加に期待を寄せた。野党を分断するための揺さぶりである。
ただでさえ行政府に対する国会のチェック機能が果たされず、最高裁違憲立法審査に消極的な現状で、憲法9条自衛隊の存在を書き加えたらどうなるか。
戦争放棄の9条1項、戦力不保持などを定めた2項の条項が事実上失効するか、意味を大きく変えることになり、軍備拡大への歯止めがなくなる恐れがある。
沖縄にとっては、地位協定の改定こそ住民生活に関わる優先すべき課題だ。

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安倍首相は選挙戦を通じて憲法論議推進を問い掛けたとして「少なくとも議論は行うべきだという国民の審判が下った」とも強調した。都合のいい強引な解釈である。
共同通信が実施した出口調査で「安倍首相の下での憲法改正」に対する反対は5割近くとなり、賛成を上回った。9条への自衛隊明記を訴えるなど争点化を図ったものの、理解は深まっていない。
今回の参院選で注目されたのはむしろ年金や消費税、賃上げなど生活に密着した政策だった。
与党が勝利したからといって全てを白紙委任したわけではない。