[大弦小弦]社会はゆっくり変わる - 沖縄タイムス(2019年7月5日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/441640
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「どうか○○をよろしくお願いします」。街角を走る選挙カーで候補者名ばかり連呼するのには訳がある。政策をPRしてもよさそうだが、それができない制約が公職選挙法にある

選挙プランナーの松田馨さんが著書「残念な政治家を選ばない技術」で裏事情をひもといている。平たく言えば、走っている車の上で許される行為は名前の連呼くらい、というのだ

▼演説しようものなら、たちまち公選法違反に問われる。ならば、候補者のキャッチコピーの連呼はどうか。条文の解釈上、短い宣伝文句は「演説」に該当しない

公選法は規制の多さから「べからず法」と呼ばれる。選挙事務所で来客にみかんを出すのはいいが、ケーキは買収に当たる。首をかしげたくなる基準もあるが、このルールに従って選挙運動は繰り広げられる

▼法の理念は紛れもなく選挙の公平性。裏返せば不公平な選挙が行われた歴史がある。明治時代、有権者は当初、満25歳以上で納税額15円以上の男性だけ。敗戦直後の1945年末、衆院選法改正で沖縄県民の選挙権は奪われた

▼松田さんは、社会を変えるには「少しずつ良くしていく」しかないと説く。途方もない道のりでも、選ばれた候補者、選んだ有権者双方のたゆまぬ努力が未来をつくる。公示された参院選。投票しなければ社会は変わらない。(西江昭吾)

 

 

残念な政治家を選ばない技術 「選挙リテラシー」入門 (光文社新書)

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