民放局の不適切番組 際どさ売る体質が問題だ - 毎日新聞(2019年6月24日)

https://mainichi.jp/articles/20190624/ddm/005/070/027000c
http://archive.today/2019.06.24-012025/https://mainichi.jp/articles/20190624/ddm/005/070/027000c

在阪民放局で、人権への配慮を欠く放送が相次いだ。偏見を助長する恐れのある内容だ。業界全体への信頼にかかわる。
読売テレビはニュース番組で、見た目で性別が分かりにくい人に対し、しつこく確認するという趣旨の企画を放送した。
性の多様さへの理解が社会に広がるなか、個人の性的指向などセクシュアリティーに興味本位で踏み込むものだ。プライバシーの侵害にもあたる。出演していたコメンテーターが、生放送中に苦言を呈したのも当然だ。
一方、関西テレビではバラエティー番組に出演した作家が、韓国人気質について「『手首切るブス』みたいなもん」とコメントした。民族差別や女性蔑視をあおる表現であり、ヘイト発言と受け取られかねない。
いずれも、取材VTRや収録番組で、プロデューサーによる事前チェックや、議論を経た上での放送だったという。適切な問題意識を持っていれば、歯止めをかけられたはずだ。公共的な使命がある放送局としての責任は重い。
特に関西テレビでは、同様の発言が以前にも放送され、社内で議論した上で「差別的な意図はない」と判断していた経緯があった。今回の謝罪コメントで「判断は誤りだった」と認めたが、議論した上での放送ならば、なおさら単なるチェックミスでは済まされない。
チェック体制の見直しだけではなく、送り手の意識改革が不可欠だ。
東京では放送されないローカル番組だった。硬いニュースに笑いを入れてバラエティー化し、軟らかく伝えたいという思いも分かる。
しかし、視聴率を意識するあまり、あえて際どいコメントをさせることで刺激的な番組にしようとしている面もあるのではないか。
他局との差別化を図るために面白さが優先され、放送の健全さがゆがめられるようでは問題だ。地域性は理由にならない。
若者を中心にテレビ離れが進み、視聴率競争や制作費削減で現場には疲弊が広がる。構造的な問題も横たわる。
在阪局だけではなく、業界全体の問題としてとらえなければ、再発防止は望めない。